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愛おしい貴方・作品SS集
第17章 星空を見上げるX'mas(契約的束縛)
◇
美波が手早く仕分けしてくれたお陰で、かなり早く調理の方に手を掛ける事が出来る。
メインの24日だから七面鳥、これは大概の国で同じ傾向らしい。
「七面鳥の方は私がやりますから、本郷さんはマッシュポテトとグリューワインの方をお願い」
「ポテトは焼いた方が良いのか?」
「そうですね、七面鳥のローストですから、焼く方が合うと思います」
「分かった」
美波はあまり変わらない。
それは色々あったし、俺の知らない範囲でもあったと思うんだが、こうして俺達と接する美波は日本に居た頃の美波のまま。
それが何れだけ嬉しく、そして大変な事だろうか?
(今の美波は盟主だ、あの頃とは違う)
この巨大闇組織の頂点だというのに、間違いなく盟主として活動している筈なのに、俺達には殆ど見せる事は無い。
考えれば仁科もそうだ。致し方なく先導する時はあれど、盟主としてという部分が抜けている。仁科こそ今の噂を作った張本人の筈なのだが、そんな素振りは一切無く……いや、前より柔軟になったか。
(頂点が普通を望む……か)
どんな事でも出来るのに、美波も仁科も自分から動く方を選ぶ。俺にすれば居心地が良いが、周りはどう思っているのだろうか? その辺りが不思議だ。
「ほ、本郷さん、ポテト焦げちゃう!」
「ん? あ、すまん」
考え事をしてポテトを忘れていたとは言えず、慌ててオーブンから取り出し……はぁ、何とか食べられる範囲に収まってくれたか。
それにしても、どうして俺はこんな事を考えたんだろうな? 既に分かり切っている事を……。