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愛おしい貴方・作品SS集
第18章 シークレット~お忍び~(禁断背徳)


やれやれ、せっかく紀永を世説き伏せて嬢ちゃんを外に連れ出すことに成功したまではよかったが、嬢ちゃんは固い態度のまま。いや違うな、この間の一件で前に戻ったと言うべきなんだろう。

(気持ちは分かるんだがなぁ)

クセというより今嬢ちゃんが置かれている環境……会長室はいいが倉原をしている時に発生した様々な出来事に加え田野倉達に目をつけられている今、少しのミスも命取りになりかねん。そんな嬢ちゃんを見ている俺のほうも辛い! だからこそこうして気分転換にでもなればと連れ出したのが本音。

「そういえば行きたい場所は決めてくれたか?」
「え!?」
「紀永には言ったはずだぞ、嬢ちゃんが行きたい場所に連れていくと」
「それ聞いてない……」
「は!? ……やりやがったな紀永のやつ」

紀永だとて嬢ちゃんと外には出たいはず、それを簡単にやる俺への意趣返し……なんだろうよ。ついでにいえばこれから行先を考えれってか!? これはどうすりゃいいんだ?

「あーなんだ、今からでも行きたい場所はないか嬢ちゃん」
「あまり思いつかない……です」

仕事仕事で遊ぶことすらせず、これじゃ何処と言っても分からんか。

(どうするべきか……)

運転しながらも嬢ちゃんをチラ見、見た目は普通っぽく装っているが早乙女邸に居る姿のまま、唯一違うのはポニーテールに上げた髪型くらいのもの。だとしたら丁度いい場所がないか?

「……デパートにでも行くか?」
「デパート? でもどうして朔夜叔父様?」
「紀永や遠藤に任せていれば普通の服に苦労する、違わないか嬢ちゃん」
「うっ、それはぁ……」

お! これはいい感じに当たりを引いた。まぁ今まで見てきたんだから当たるだろうよ、あの二人じゃ妥協ってもんがないからな。
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