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愛おしい貴方・作品SS集
第18章 シークレット~お忍び~(禁断背徳)


いやー楽しい楽しい! 独り暮らしのせいで稀に食料品程度は買いに行く俺だが、こうして誰かと……特に女性と一緒に買い物、しかも多少俺好みに買い漁るのが楽しいときた。更に言えば嬢ちゃんの表情、買うたびに困ったり悩んだり最後は歳相応に喜んだりとコロコロ変わるのがまたいいんだ。叔父馬鹿と言われればそれまでだが、普段が歳より大人びている嬢ちゃんだからなぁ、こうして普通にさせてやりたかったという気持ちも多分にある。こんなのは俺にしか出来ないからな、紀永や遠藤では無理な話、嬢ちゃんに近すぎる。
そんな無理な買い物もひと段落し休憩に選んだのは、下に見えていたカフェスペース。朝に連れ出し腹も減っているだろうと軽食程度は置いてある店に決めた。

「なに食うんだ嬢ちゃん」
「えっと……これ、いいですか?」
「ん?」

小さく言って嬢ちゃんが指を指したのは……クレープ、なるほどこういうところは歳相応なんだなと逆に安心するぞ。

「いいぞ、いくらでも食え食え」
「沢山はちょっと……。でも屋敷じゃ食べられないので」
「そうだよな、俺でさえ出るとは思えん」
「ですよね、私も出るとは思えないもの」

俺の記憶のせいか早乙女邸というより昔の早乙女本宅イメージがいまだ残るあの屋敷、思い出す限りでもスイーツなどほとんど出たことはなく……それは紀永に代替わりしても変わらないらしい。今は従業員なんかも居るんだ、あの頃よりも更に出なくなっているだろう。
運ばれて来たクレープとアイスコーヒーを見て嬢ちゃんは少しだけ笑顔を見せる。紀永から喜怒哀楽は激しいほうだとは聞いたが、本社に居る嬢ちゃんにはあまりそういうのは見受けられず、せいぜいお愛想笑い程度に微笑むくらいしか俺は見たことがない。ただ一つ紀永と一緒に居る時は別だが、俺に向けてはないだろうな。
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