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第4章 目覚めた女

颯爽と扉を開ける勇気はない。それでも平静を装い扉に手を掛けようとした、その時………

『やあ、こんばんは（笑）』

『あっ！こ…こんばんは…』



慣れたエスコートで、形的には同伴だった。


『おやおや、いらっしゃいませ（笑）』

『縁ですかね（笑）』

椅子を引いて席に促す仕種に全く嫌味を感じない。手慣れていても、ただただスマートだ。


『いつものでよろしいですか？』

『そうだね、彼女にはマンゴーで。』


『藤堂といいます。藤堂豊。よろしく（笑）』

『綾…水野綾です…よろしくお願いします。』


二人は、少なくとも藤堂はざっくばらんに打ち解けた雰囲気、そこにいる綾は、ぎこちないながらも、藤堂と居ることに幸せな気分に浸れた。




『彩さんも私と同じ仕事人間でしたか（笑）』

『藤堂さんのように凄い方は、なりたくなくても仕事が追いかけてきてしまうのでしょう？私は、不器用なだけで……』

『これからは、仕事の後の彩さんとのひと時があると思えば、楽しみがあるというもんです（笑）あ、これは失敬。』

『いえ！嬉しいです。』


『藤堂様、水野様、お似合いですよ。およろしいことです。』

マスターはニコニコと楽しそうだ。

マスターを見ていると、藤堂さんを疑う必要もないと安心させてくれる。

『…さん？』

『彩さん？』

『ぁ、はい？』

『心配しないでください。一応、常識とマナーはわきまえているつもりですよ（笑）』

『すっ、すいません！』


『明日は土曜日だ。お休みですか？出かけませんか？車を出します。』

あまりにとんとん拍子に事が進んで、思考回路がついていかない。

『水野様、行ってらっしゃい。初夏の軽井沢はいいですよ（笑）』

『私でよければ……』


私の日常に有り得なかった展開の幕が切って落とされた。