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裸身
第7章 挑発
悦子は我が城を一歩出ると【おやじ】になる。

バリバリのサラリーマンだ。OLなどとは形容出来ない活躍をする悦子。

この春の人事で前代未聞の取締役に大抜擢された。
一見、やり手のOLといった感じの女性なのだが、なかなかどうして凄腕の営業マンなのだ。

取締役になった今、営業に出る回数は激減したが、他の仕事が増えた。

それでも自分のリズムを変えないスタイルを続けている。

それは、時間もそうだが、入社以来必ず花を生け、デスクを拭いているのだ。悦子の居るフロアーにデスクは20はあるし、来客用のテーブルセットもある。

さぞかし新人OLにとってはやりづらいことだろうと思うのだが、銘々お茶をセットしたり、給湯室を磨いたり、知らず知らずの内に仕事を見つける術を身につけさせていた。

だから、悦子は憧れの先輩として一目置かれている。

一挙手一投足が滑らかで手早い。身のこなしは艶っぽさすら感じさせる。

【おやじ】になるのは始業したその時から。

メリハリというのだろうか、ON OFFの切り替えが凄い。



『仲丸取締役、お時間です。』

秘書が大仰(おおぎょう)に分厚いスケジュール帳を広げている。

『解りました。車を回してください。3分で行きます。』

『かしこまりました。』


仕事は分刻みでこなす。必要事項を端的に確認して、ポイントを押さえる。もちろん笑顔も忘れない。そして鋭い洞察力も。




ただ………



悦子は何かが足りない、満たされない充実感にストレスを感じ始めていた。





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