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裸身
第7章 挑発
『嘘だろ?!』

翔の目の前で、といっても望遠鏡越しだが、スルリとバスローブを落とした悦子。

目眩が翔を襲う。
天真爛漫なのか、無頓着なのか、やはり見せたいのか、レースのカーテン一枚の先で、美しい裸婦が次々に服を着ては脱ぎ、着せ替え人形をやっているのだ。


『もしかして、俺が覗き見してるのを解って、挑発してるのか?!』

鼓動が体を破壊する勢いで高鳴った。

翔は、あの年上の女性に恋をし始めていた。

『だめだ!』

見ていられず、ベッドに崩れ落ちた。
興奮は止まない。
何度寝返りを打っても、鮮明に美しい裸体が追いかけてくる。
眠れないままに朝を迎えてしまった。





いろいろ組み合わせて、やっとほぼ満足な着合わせが決まり、何の用もなく外に出た悦子。

それとほぼ同時に、翔もふらふらと街に出掛けた。


『あっ…』

翔と悦子は同じ電車の同じ車両に乗り合わせている。

『今日は会いたくなかったな…車両を替えよう。』

悦子に背を向けた時だった。

『たすけて……お願い…』

その声に振り返ると、悦子の辛そうな顔が目に入った。

『痴漢?』

声を殺して悦子に尋ねる。頷く悦子。

酷く怯えているように見えた。


『姉ちゃん?姉ちゃんじゃん!久しぶり(笑)』

ほんとに情けないが、そんな台詞しか思いつかなかった。

『あっ!』

『俺、次で降りるけど、姉ちゃんは?』

『あ…うん、私も次で降りるのよ。』


痴漢は、最初の『姉ちゃん』で、びっくりしたのか、すぐに手を離し、人混みの中に隠れて行った。




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