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暁の星と月
第3章 暁の天の河
「…縣はきっと貴方を真剣に思っていますよ。…縣が本当は誰を愛しているか、知らないけれど…そんな風に思ったら縣が可哀想だ」
打って変わっての真摯な言葉に、大紋は片眉を上げる。
「君がそんなことを言うなんて、意外だな。君は暁が好きなんだろう?…僕と暁が上手く行かないほうがいいんじゃないか?」
風間はふっと笑う。
「僕は他人の不幸を願わないと恋が叶わないなんて思っていないですからね。本当に手に入れたければ正攻法でアプローチしますよ」
…と、言うか…と、大紋の方を向き直る。
不意に風間の纏った空気が艶めいた。
「…縣はもちろん大好きだけど…僕は貴方にも興味が出て来ましたよ。…敏腕弁護士さんでハンサムで家柄も良くて優しい…。おまけにセックスも上手い。
…なのにどこか自信なげで哀愁を感じさせる」
風間は大紋に甘いくちづけをするほどの距離に、近づく。
異国人めいた彩虹の鳶色の瞳が、艶っぽく細められる。
「…一度試してみたいな。僕はどっちでもいいですよ。抱いても抱かれても。相手に合わせることが出来るんです。凄いでしょ?…先輩はどちらがお好みですか?
…貴方は一見、男らしく攻めたいタイプに見えるけれど…何かの拍子に男に組み敷かれるのが妙に嵌る色っぽいタイプにも見えるけれど…。どうですか…痛ッ!」
大紋はじろりと風間を睨み、軽く頭を叩いた。
「馬鹿か、君は」
そして立ち上がり、屋敷の方に歩き出す。
「怒ったんですか?先輩」
振り返ると相変わらずの人を食ったような表情の風間だった。
「…ダイニングの席を一つ用意させてくる。
晩餐を食べていきたまえ。…どうせ暇なんだろう?」
風間は声をあげて笑った。
「…つくづく貴方は良い人だ…」

そして、大紋が屋敷に入るのを見届けると、灰皿に置かれた大紋の吸い差しの煙草を手にして吸い込む。
「…もっと自信を持てばいいのに…じれったい人だな」
煙とともにしみじみとした温度のある言葉を吐き出した。









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