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暁の星と月
第1章 暗闇の中の光

箸を握りしめたまま涙を流していると、向かい側から心配そうな礼也の声が聞こえる。
「…暁…」
…泣いてはだめだ。礼也様は、せっかく僕に優しくして下さっているのに…泣いたりしたら、気を悪くなさるかもしれない…。
暁は必死で泣き止もうとする。
「…ご、ごめんなさい…これ…すごくおいしくて…母さんにも食べさせてあげたくて…ごめんなさい…泣いたりして…ごめんなさい…」
涙を堪えようと口を抑える。
…泣いちゃだめだ…礼也様に嫌われる…。
…突然、暁の身体は温かく、良い薫りに包まれた。
「…泣きなさい、我慢しなくていいよ。思い切り泣きなさい」
礼也が背後から暁の身体を抱きしめる。
暁は驚きのあまり、息が止まる。
「…暁はまだ子供だ。悲しい時には泣いていいんだよ」
「…れ、礼也様…」
見上げた礼也の美しい顔は、涙で曇ってよく見えなかった。
「…兄さんだよ、暁…」
けれど、礼也の笑顔ははっきりと分かった。
暁の中で、一気に熱いものが溢れ出し、気がつくと礼也に縋り、声を放って泣き出していた。
…そして…
「…に、にいさん…」
礼也が嬉しそうに暁を優しく抱きしめる。
「そうだよ、暁…」
「…にいさん…にいさん…!」
…それはまるで、魔法の言葉だった。
口に出すたびに、暁の身体と心の中から母を失った悲しみや、暗闇の中で恐怖と闘ったことや、辛かった出来事などが涙と共に少しずつ雪のように消えてゆくのがわかったのだ。
「…暁…いい子だ。…お前は一人でよく頑張ったね。…もう何の心配もいらないよ。私がお前を守るから…だから安心していいんだ…」
礼也の言葉は、心地よい子守唄のようだ。
…温かく強い腕…。
この腕の中にいられる奇跡のような幸せ…。
…夢なら…覚めないでほしい…。
暁は必死で祈る。
そして、まるで赤ん坊に還ったかのように、ひたすらに泣き続けるのだった。
「…暁…」
…泣いてはだめだ。礼也様は、せっかく僕に優しくして下さっているのに…泣いたりしたら、気を悪くなさるかもしれない…。
暁は必死で泣き止もうとする。
「…ご、ごめんなさい…これ…すごくおいしくて…母さんにも食べさせてあげたくて…ごめんなさい…泣いたりして…ごめんなさい…」
涙を堪えようと口を抑える。
…泣いちゃだめだ…礼也様に嫌われる…。
…突然、暁の身体は温かく、良い薫りに包まれた。
「…泣きなさい、我慢しなくていいよ。思い切り泣きなさい」
礼也が背後から暁の身体を抱きしめる。
暁は驚きのあまり、息が止まる。
「…暁はまだ子供だ。悲しい時には泣いていいんだよ」
「…れ、礼也様…」
見上げた礼也の美しい顔は、涙で曇ってよく見えなかった。
「…兄さんだよ、暁…」
けれど、礼也の笑顔ははっきりと分かった。
暁の中で、一気に熱いものが溢れ出し、気がつくと礼也に縋り、声を放って泣き出していた。
…そして…
「…に、にいさん…」
礼也が嬉しそうに暁を優しく抱きしめる。
「そうだよ、暁…」
「…にいさん…にいさん…!」
…それはまるで、魔法の言葉だった。
口に出すたびに、暁の身体と心の中から母を失った悲しみや、暗闇の中で恐怖と闘ったことや、辛かった出来事などが涙と共に少しずつ雪のように消えてゆくのがわかったのだ。
「…暁…いい子だ。…お前は一人でよく頑張ったね。…もう何の心配もいらないよ。私がお前を守るから…だから安心していいんだ…」
礼也の言葉は、心地よい子守唄のようだ。
…温かく強い腕…。
この腕の中にいられる奇跡のような幸せ…。
…夢なら…覚めないでほしい…。
暁は必死で祈る。
そして、まるで赤ん坊に還ったかのように、ひたすらに泣き続けるのだった。

