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暁の星と月
第3章 暁の天の河
「…君の生い立ちなんか関係ない…」
苦しいほどに、抱きしめられる。
「僕は君だから好きなんだ…暁…」
熱い吐息を首筋に感じ、胸の鼓動が早くなる。
だからつい、ぶっきら棒に言ってしまうのだ。
「…貌ですか…?」
「…え?」
「…貌ですか?…それとも身体ですか?…僕の好きな所って…」
大紋は思わず吹き出して、声を立てて笑う。
「あはは…なんて質問だ!」
「…だって…春馬さん…僕のことをずっと…その…セックスの対象としか見ていない気がして…」
暁は思わず赤くなって俯く。
自分が綺麗だと自惚れるつもりはない。
暁は昔から、男にも嫌らしい目で見られる自分の女顔が大嫌いだった。
身体が特別に魅力的だとも思わない。
特に、性技に関しては暁はまだ幼稚で、色事に長けた大紋には物足りないはずだ。
…けれど他に魅力的な所など皆無なので、そうとしか思えない。
別に貌と身体が目当てでも構わないが、それだけだと大紋はすぐに自分に飽きるのではないだろうか…。

俯く暁の貌を捉えた、温かい手が男の方に向けられる。
大紋がうっとりしたような眼差しで、暁の貌を見つめる。
「確かに僕は暁のこの綺麗な貌が大好きだ…。透けるような白い艶やかな肌、夜の闇のように黒く神秘的な瞳…可愛らしい鼻、珊瑚のように可憐な唇…」
「…春馬さん…」
少し艶めいた眼差しになり、暁の身体のラインをなぞる。
「…身体も…暁は気づいていないかもしれないが…君は凄く淫靡な素晴らしい身体をしている。…一度抱くともう手離せないような…麻薬のような身体だ…全てがたまらなく好きだ…」
自分の言葉で欲情したかのように、大紋は思わず暁を抱き寄せ、唇を奪う。
「…んっ…や…あ…」
大紋は名残惜しげに唇を離すと、詫びるように優しく抱きしめる。
「…君の貌も身体も全てが大好きだ。…でも…」
睫毛が触れ合いそうな距離で優しく見つめる。
「…一番惹かれているのは、君の魂だ」
「…魂?」
「そう…。君のどこかいつも寂しげで、放っておけないような所…何を考えているのか、君の心を知りたいといつも気になってしまう所…そこに一番惹かれる…」
「…春馬さん…」
「…だから僕は君の心が欲しい…」
大紋の瞳が暁を捉える。
…大紋は知っているのだろうか…と暁は思った。
暁がまだ礼也を忘れられないことを…
…この胸の奥底に秘めた叶うことのない…しかし諦めきれない片恋を…

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