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暁の星と月
第3章 暁の天の河
障子を開け、縁に降りる。
白く華奢な素足に桐の下駄を履き、所々に点いているランプの明かりを手掛かりに大紋を探す。

…花壇の前の籐の椅子に座り、ぼんやりと遠くを見つめている大紋の後ろ姿を見つけた。
その後ろ姿は驚くほどの孤独感に満ちていて、暁は胸を突かれる。
いつもの自信に満ち溢れた堂々たる雰囲気とはまるで異なる姿であった。
…大紋は静かに煙草を燻らせていた。

…春馬さん…煙草、吸うんだ…。
視線を感じたのか大紋が振り返り、慌てて煙草を灰皿に押し付ける。
暁はゆっくりと大紋に近づく。
「…煙草、吸われていたんですね…」
大紋は苦笑いする。
「…ごめんね、嫌だよね」
暁は静かに首を振る。
男への温かい思慕で胸が一杯になる。
「…僕が煙草に良い思い出がないと言ったから?それでずっと吸わなかったんですか?」
大紋は隣に座るように手を差し伸べ、優しく笑った。
「…君に好かれたい一心でね…。滑稽だろう?」
「…そんなこと…!」
暁は自分から大紋の胸に身を寄せる。
大紋は少し驚いたように、目を見開き小さく笑って暁を大切そうに抱きしめる。
…大紋の胸元のシャツからは煙草の香りがしたが、それは高価な外国煙草のようで…暁が忌み嫌う母の情夫達の劣悪な安煙草と違い、不快な感情は全く湧かなかった。
「…どうして…?」
「うん?」
「…どうして僕にそんなに優しいんですか…?」
「…愛しているから…」

暁は次第に夜の帳に包まれる中、男の貌を見上げる。
ランプに照らされた男の貌は、端正で美しく…世の女性で彼に心惹かれない人は皆無であろうと思えるほどに魅力的であった。
暁の貌を愛おしげに触れる大紋の手を、思わず苦しげに退ける。
「暁?どうした?」
不思議そうな大紋の視線を避けるように貌を背ける。
「…僕なんか…どこがいいんですか?…数年前まで貴方が足を踏み入れたこともないような貧民長屋に住んでいて、最低の生活をしていたような子供ですよ。…貴方みたいに生まれながらのお坊ちゃまとは違いすぎる…」
「…暁…」
暁の手を捉えようとするのをわざと冷たく払いのけ、立ち上がる。
「…未だに僕は今の生活や自分の姿が信じられない…。全ては僕が見ている夢の世界なんじゃないか…て…だから、貴方みたいな人にそんな風に想って貰えるような人間じゃないんです」
背を向けた暁を、温かく力強い大紋の腕が抱きしめる。





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