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暁の星と月
第6章 その花のもとにて
「君には乗馬のこともよく教えてもらったし…」
「…とんでもございません。…私など…。暁様は本当に良く努力され、ご立派な馬乗りになられました。私は暁様の美しい騎乗姿が好きです。
…馬場馬術は正確さももちろんですが、人馬一体となったフォームの美しさ…なにより気品と優雅さが大切です。暁様にはぴったりの競技かと存じます」
優しく励まされ、暁は温かい気持ちになる。
「ありがとう、月城。…うん。馬場馬術で頑張るよ。…兄さんを心配させるのは心苦しいしね」
優しい兄のような眼差しで、月城は頷く。
そして
「…来週の旦那様のご帰国記念のガーデンパーティーには是非、お越しください。…暁様は梨央様がお心を開ける数少ない方なのです。…大紋様もご招待いたしました」
暁は微笑む。
「もちろん、喜んで伺うよ。…春のお庭はまた見事だろうね…拝見するのが楽しみだ…」

…と、その時、暁の肩を馴れ馴れしく抱きすくめるものがいた。
「暁、俺以外の人間と馬場でいちゃつくなんて、いい度胸だ。…しかも…ああ、随分綺麗な男じゃないか、…うん!俺といいとこ勝負だ」

…こんな風にふざけて絡んで来るのは一人しかいない。
暁はうんざりしたように、背後の男を見上げた。
「…風間先輩…なんですか?」
冷たい言葉にも風間は少しも動じず、屈託無く尋ねる。
「紹介してよ、暁。」
暁は仕方なく、月城を風間に紹介する。
「…こちら、北白川伯爵家の執事の月城さんです。
月城、こちらは僕の高校時代からの先輩の風間忍さんだ」
風間は暁の肩を抱いたまま、戯けたように声を上げる。
「え?それだけ?高校時代からの先輩で、縣に熱烈に恋焦がれている哀れな恋の奴隷の風間だ。よろしく」
「先輩!」
陽気に差し出された風間の手を月城は恭しく握る。
「初めまして。月城と申します。私のような身分のものをわざわざご紹介していただくなど、恐縮です」
「身分だなんだ堅苦しいことはなしにしよう。ここでは皆、ただのライダーだからね」
月城はふっと柔らかい笑みを漏らした。
月城が気を悪くはしてない様子を見て、暁はほっとする。
「ところで…縣、障害馬術をやめるの?」
耳聡く聞きつけていたらしい。
「はい。…この間の落馬で兄が余りに心配するので」
「確かにあれは俺も心配したけど…兄さんは縣が可愛くて仕方ないんだろうなあ」
「もう大人なんですけれどね」
困ったように笑う。
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