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暁の星と月
第6章 その花のもとにて
「…僕が縣の家に引き取られた時から、兄さんはずっと梨央さんに夢中だった。…本当に宝物のように大切にしておられた。…だから…こうなることは分かっていたんだ…。兄さんは梨央さんにプロポーズされて、それを受けていただけた。…何より喜ばしいことだ。…僕は心より喜んでいる。…嫉妬や憎しみの気持ちなど一つもない…」
静かに語り終える。
「…暁様…」
月城を見上げる。
月城は、変わらない。
7年前から少しも変わらない。
その辺りを払うような威厳も、端正に整った貌も、暁を心配してくれる優しさも…。
…だが、僕はどうだ…。
彼の美しい目には、僕はどう映っているのだろうか…。

「…全部嘘だ」
月城の眼鏡の奥の端正な眼差しが少し揺らぐ。
暁の綺麗な唇が妖しく歪む。
「…僕は憎んでいる…梨央さんを…兄さんを独り占めしてしまう梨央さんを…激しく憎んでいる…梨央さんが居なくなればいいと、心から願うほどに…梨央さんを憎んでいる…」
ふっと暗い笑みを漏らす。
「さあ、どうする?君は梨央さんの執事だろう?
…しかも梨央さんを愛している…。これには僕も驚いたけれどね…。そうか、僕と君は同じ立場か…お互い、相手が居なくなればいいと思っているからね」
くすくす笑いだす暁に、月城は穏やかに声をかける。
「私は、縣様が居なくなればいいと思ったことは一度もございません」
暁ははっと目を見開く。
「…私は確かに梨央様をお慕いしておりました。けれどそれと同じくらいに、縣様の素晴らしさを存じておりました。縣様ほど、梨央様に相応しい方はいらっしゃいません。…私は心の底から、お二人のご婚約を嬉しく思っております」
暁は薄桃色の唇を噛みしめて、叫ぶ。
「偽善だ!…そんなの…綺麗ごとだ…!」
月城は眼鏡の奥の瞳で瞬きもせずに、暁を見つめた。
「私は執事です。…執事は、綺麗ごとを申すより他に心を表す術を知りません」
その努めて冷静を装う声には、月城の生身の声が僅かに透けて見えた感じがして、暁は己の自己中心的な言葉を激しく後悔した。
自分を恥じて、顔を背ける。
「…ごめん…君に八つ当たりをしてしまった…僕は…最低だ…」
月城は静かに微笑み首を振る。
「…いいえ、ちっとも。…暁様はそのような方ではございません。…暁様は、梨央様を本当は憎んではおられないのも、よく存じております」
「…月城…?」
暁はゆっくりと振り返る。

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