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暁の星と月
第6章 その花のもとにて
暁は、小高い丘の上に月城をいざなった。
この乗馬倶楽部は敷地が広く、馬を早駆けやクロスカントリーの練習をさせるのに適した丘や小川なども有していた。
丘の上に登り切ると、暁が月城を振り返る。
長めの艶やかな髪が春の風に靡き、細い指先で物憂げにかき上げる。
「…驚いただろう…?…僕があんな風に…男に抱かれて…悦んでいるのを見て…」
白い花のような儚げな美貌には諦めたような寂し気な微笑みが浮かんでいた。
「…いいえ…。…驚かなかったと申し上げたら嘘になります。…けれど…驚いたとしても…それは別の意味です」
暁は美しい眉を顰めた。
「別の意味?」
月城は真っ直ぐには暁を見た。
暁はだいぶ背が伸びたが、月城が見下ろすくらいに身長差はある。
美しい人は主人の梨央で見慣れている。
だが、暁は全く異質な美しさを備えていた。
梨央が明るく翳りのない陽性な美だとしたら、暁は冬の夜空に冷たく密やかに輝く星のようだ。
「…大紋様と愛し合われていた貴方は…息を呑むほどにお美しかった…。私はそのことに驚いたのです」
暁は戸惑ったように俯く。
「…そんな…」
そして、やや睨むような眼差しで月城を見上げる。
「…僕を見て穢らわしいと思わなかったのか?」
月城は穏やかに首を振る。
「いいえ、全く…」
美しい黒目勝ちの瞳が怯えるように月城の次の言葉を待つ。
暁の傷つき易い繊細な心が透けて見えるようだった。
「…暁様、人間の愛の形は様々です。異性を愛する人がいれば、同性を愛する人もおります。
私は貴方様をお小さい頃から見てまいりました。
貴方様は私にとって昔から少しも変わりません。
美しく、壊れ易そうに繊細なお心をお持ちの気高い方です。…だからこそ私は心配なのです」
「心配…?」
「はい。…お兄様が婚約された今、どのようにお心が傷付いておられるのかと…また、大紋様とはお幸せな関係でおられるのかと…」
暁は薄桃色の形の良い唇を微かに開き、溜息を吐いた。
「…そんなの…お節介だ…」
「そうかも知れません。…けれど、気になるのですから仕方ありません」
月城の言葉にふっとすぐに溶けてしまいそうな淡雪のように笑う。
「…頑固だな。…そう…兄さんと梨央さんのことは…ずっとそうなるような気がしていたよ…お二人はお似合いだ…まるでお伽話の王子様とお姫様みたいに…」
暁の切れ長の瞳が遠くを見つめる。



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