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暁の星と月
第7章 愛と哀しみの円舞曲
従業員達に囲まれて、社内を案内される暁を暫し見つめる。

…暁は益々美しくなった。
艶やかな黒髪は入社に合わせて、少し短めになり、大人っぽく撫でつけられているが、一筋の髪が額にかかり風情ある美しさが醸し出されている。
髪が上げられている為に美しい白い額が露わになり、その下の優美な形の眉、長く煙るような睫毛、黒目勝ちな切れ長のアーモンド型の瞳、すんなりと彫刻刀で刻んだような鼻梁、形の良い薄桃色の唇…
何れももう何年も見慣れているはずなのに、毎回見る度に胸が締め付けられるような感動を覚える。

二十歳を超えて、なめらかな白い頬のラインが若干シャープになり、それが物憂げな色香を醸し出している。
見惚れる大紋に気づいたのか、暁が視線を上げて仄かに微笑み返してきた。
大紋は、照れながら目で合図する。

「…相変わらず、お前と暁は仲が良いな」
礼也に耳元で囁かれどきりとする。
「そ、そうか?」
動揺を取り繕う。
「ああ。…お前には不在がちな私に代わり、暁の世話を良く焼いてもらったな。…暁が立派に成長出来たのもお前のお陰だ。…感謝しているよ」
しみじみと呟かれ言葉に詰まる。
「…礼也…」
…自分は暁を幸せに出来ているだろうか…。
親友の大切な弟の人生を歪ませていないだろうか…。
礼也に感謝される度に、胸が痛む。

…自分がまだ10代の暁に愛を告白し、彼の全てを奪い、身も心も作り変えてきてしまった…。
暁に兄に決して語れない暗い秘密を負わせてしまった。
…何より…
女性を愛することができない身体にしてしまった。
自分の罪は深い…。

だが、あの類稀なる美しくも妖艶な奇跡の淫花植物のような青年の手を離すことは、到底できない。
より深く暁を愛する度に、大紋は抜け出すことができない甘美な沼に沈みゆく自分を感じるのだ。








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