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暁の星と月
第7章 愛と哀しみの円舞曲
居間に入るなり、礼也は革張りのソファーにどさりと座った。
その座り方を見て、いつもの礼也らしくないと暁は訝しんだ。
礼也はどんなに疲れていても急いでいても、雑な所作をすることはないからだ。

暁は丁寧に淹れたカフェ・オ・レを礼也の愛用のジノリのカップに入れ、差し出す。
「…本当はエスプレッソが飲みたいだろうけれど…夜遅いし、眠れなくなるといけないから…」
遠慮勝ちに添えた言葉に礼也は嬉しそうに暁を見つめ、カップを受け取った。
「ありがとう。…暁が淹れたカフェ・オ・レは美味しいから大好きだよ」
頭を子供のように撫でられる。
胸の奥がじんわりと温かくなる。

美味しそうにカフェ・オ・レを飲む礼也に、暁はおずおずと尋ねた。
「…兄さん…何かあった?」
礼也は一瞬、カップを持つ手を止める。
「…うん?」
「…少し…いつもの兄さんと違うから…。どうしたのかな…て…」
礼也の凛々しい眼差しがじっと暁を見つめる。
「…そうかな?」
「…うん…。いつもの兄さんとどこか違う…。
…あの…なんだか少し…寂しそう…」
礼也はふっと笑いを漏らすと、カップを丁寧にテーブルに置き、暁に向かい静かに手招きをした。
「…おいで、暁…」
隣に座るように手招きされ、暁は少し驚きながら近づく。
礼也の隣に腰掛けると、そのまま力強い腕で抱き寄せられた。
暁の華奢な身体がびくりと震える。
「…兄さん…」
礼也はまるで幼子を抱くように優しく暁を抱き締める。
髪を優しく撫で、ふっと息を吐く。
「…お前は、いい匂いがするな…」
「…そ、そう?」
「…うん…名前は分からないが…異国の花のような匂いだ…神秘的で…気持ちが落ち着く…」
「…兄さん…」
兄の唇が暁の髪に触れたような気がする。
兄に触れられているところは全てが熱い。
礼也が暁の匂いを嗅ぐように深呼吸しながら、強く抱き締める。
「…お前は優しいな…」
暁は自分のドキドキと音を立てている鼓動を悟られまいと、身を固くした。
「…暁…まだ誰にも言っていなかったのだが…お前には話すよ」
礼也は腕の力を解いた。
そして、まるでくちづけするかのような距離で暁をじっと見つめると…愛しいような優しいような寂しいような…全てがない混ぜになった不思議な表情で静かに告げた。
「…私は、梨央さんとの婚約を解消したよ…」
…暁は驚きの余り、声を失った。

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