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暁の星と月
第7章 愛と哀しみの円舞曲
「…暁…やめなさい」
礼也の静かな声が制する。
けれど止めることなどできない。
梨央と自分を重ね合わせてしまう己れがいるのだ。
「…同性同士で…しかも姉妹でなんて…そんな…そんな恥知らずなことをして、兄さんを傷つけるなんて許せない!」
…僕だって…本当は兄さんに愛を打ち明けたかった…兄さんと愛し合いたかった…けれどそれは、許されないことだから、諦めたのだ…ずっと胸の奥底に閉じ込めたのだ。
…それを…梨央さんは…意図も簡単にやってみせたのか?
怒りと妬ましさと羨望が胸の中を渦巻く。
「…優しい兄さんの気持ちや恩を踏みにじって、自分勝手な恋愛を優先させるなんて、梨央さんは酷い人です!僕は…梨央さんを軽蔑します!」
瞬間、鋭い声が飛んだ。
「暁!やめなさい!」
暁はその声にはっと身を硬くする。

礼也にこんな風に叱責されたことは、初めてだったからだ。
かつて礼也は暁に声を荒げたことはただの一度もなかった。
それは、暁が幼少時代から母親の男達に理不尽な扱いをされ育って来たので、荒くれた男達や大声にたいして、恐怖を感じているということを察知していたのだと思う。
また、それでなくとも礼也は人に対して声を荒げることは決してしなかった。
叱る時には穏やかに諭すようにじっくりと言葉を重ねた。
その礼也が、初めて暁に対して大声を出したのだ。
驚愕に固まる暁を見て、礼也もはっと我に帰る。

そして、すぐに暁を優しく抱き締め、詫びた。
「すまない、大きな声を出してしまって…許してくれ」
暁は必死で首を振る。
「…兄さんは悪くない…」
「…暁…お前は私の為に憤ってくれたのだね。…お前は優しい子だ…」
…違う…
自分は妬ましいのだ。
自分がしたくても出来ないことをやってみせた梨央を…
羨ましくて仕方がないのだ。
「…だが、暁…」
礼也は腕を解き、吐息が触れ合うほどの距離で暁を見つめ、諭すように口を開く。
「…梨央さんは悪くないのだよ」
「兄さん⁈」
「…恋愛で起きたことは、誰も悪くはない。
人は恋の前では無力なのだ。理由も分からず、気がついた時にはその罠に陥っている…それが恋だ…。
…お前にも覚えがあるだろう?」
少し色めいた表情で微笑った。

暁の胸に、大紋の面差しが浮かんだ。
…愛しくて…苦しくて…でも止めることができなくて…。
…梨央さんもそんな想いをされているのだろうか…。





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