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暁の星と月
第7章 愛と哀しみの円舞曲
…次に暁が意識を取り戻した時、大紋は暁の傍らでじっと彼の貌を見つめていた。
優しい…どこまでも優しく哀しい眼差しをして…。
「…君は…どうしても僕と別れたいのか…?」
暁は横たわったまま、小さく頷く。
「…僕が君を連れて、どこか知らない土地に逃げようと言っても…か?」
ふっと寂しげに笑う。
「…そんなことは夢です…出来るわけがない…貴方は家を捨てられないし、僕もそうです。…哀しいけれどそれが現実です…」
「…暁…」
「…それに…絢子さんは…おそらく貴方がいないと生きては行けない方でしょう。…貴方ももう分かっていらっしゃるのではないですか?」
大紋は眉を寄せ、何か答えようとして…しかし、ふっとそれを諦めた。

暁は大紋の逡巡を断ち切らせてあげたくて、はっきりとした口調で続けた。
「…けれど僕は…貴方がいなくても生きて行けます」
大紋の顔が強張る。
それを見たくなくて、暁は目を閉じる。
「…僕はずっと一人だったから…。一人は慣れているんです。…それに…」
決定的な言葉を投げかける。
「…僕には兄さんがいる。…兄さんさえ失わなければ…僕は生きて行けるんです…」
暫くの沈黙ののち、大紋の小さな溜息が聞こえた。
そっと瞼を開ける。
大紋は、何かを悟ったような寂し気な笑みを浮かべていた。
「…結局、それか。…やはり僕は最後まで、礼也に勝てなかったのか…」
…胸が張り裂けそうに痛い。
けれど、涙を見せる訳にはいかない。
大紋を守るために…
自分はどう思われても構わない…
「…だって…兄さんは僕の全てだから…」
大紋は薄く笑う。
「…そうだな。…僕は…つまりはずっと片思いだったということだな…」
暁は黙っている。
…ここで何か一言でも発したら、おしまいだからだ。
心を無にして、大紋を見つめる。

…けれど、これだけは伝えたい。
「…僕は…幸せでしたよ。…貴方に出逢えて…貴方に愛されて…幸せでした…」
訣別の言葉を送る。
大紋は一瞬目を閉じ、やがてゆっくりと開くと、立ち上がる。
…もう身仕舞は済ませていた。
暁はしどけなく、褥に横たわったまま男を見る。

…暁の薄い陽の光の中、佇む男…。
上質なスーツに身を包み、すらりとした美しい体躯…
理知的に整った顔立ち…
…暁が生まれて初めて、身も心も愛した男だ。
見慣れた…包み込むような優しい眼差しが、最後に暁を捉え…懇願した。
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