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暁の星と月
第7章 愛と哀しみの円舞曲
…朝靄が立ち込める中、大紋は広い庭園のプロムナードを進む。
今日はなかなか霧が晴れない。

庭園の奥、一人の女性が、ライラックの茂みの前で花鋏でその花を手折っていた。
淡い桜色の裾の長いドレスが愛らしい。
長い髪を綺麗にカールさせ、背中に垂らしている。
…両親の愛を一杯に受け、何不自由なく大切に育てられた美しい令嬢…。

人の気配を感じたのか、女性が振り返る。
「…春馬様…!こんなに朝早くから…!」
西坊城絢子は驚きに目を見開き、次に頬を薔薇色に染めた。
大紋は優しく微笑みかける。

恥じらいと、憧憬と…その小柄な身体いっぱいに愛を表現している娘…。
「…おはようございます、絢子さん」
「お、おはようございます…。どうなさったのですか…?何か…急なご用でいらっしゃいますか?」
それには答えずに大紋は話しかける。
「何をなさっているのですか?」
絢子は、慌てて腕に掛けた藤の花籠を見せながら答える。
「…ライラックの花が…もう見納めの頃なので、摘んでお部屋に飾ろうかと…」
そして…
…春馬様に見ていただきたくて…と、小さな声で呟いた。
大紋は穏やかに笑いながら近づく。
「…手伝いましょう。…随分高いところに咲いていますね」
花鋏を受け取ると、小柄な絢子の背後から覆いかぶさるように長い腕を伸ばし、ライラックの花を手折る。
絢子が自分の前で息を潜めて緊張しているのが分かる。
大紋は絢子を見つめながら、ライラックの花を渡した。

…愛らしく、いじらしく、可愛い娘…。
暁に出会わなければ、もしかしたら最初から好きになっていたかもしれない娘…。

絢子は俯きながらライラックを受け取り、何かを決心したかのように大紋に背中を向けた。
そして、精一杯明るい口調で話し出す。

「…もう…よろしいのですよ…春馬様…」
「絢子さん?」
「…母が、無理ばかり申しまして、申し訳ありません…。…いいえ、私も…ついついお会いしたい気持ちが抑えきれなくて…春馬様のお優しさに甘えてしまいました。…ずっと私のところに来て下さって…感謝しております…。でも…その間、春馬様の愛している方にお寂しい想いをさせていたのではと、気になっておりました…」
「…絢子さん…」
「…でも春馬様を独り占めしたくて…それを言い出せませんでした。絢子は狡い…醜い女です…ごめんなさい…」
絢子の小さな声が震えだす。



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