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暁の星と月
第7章 愛と哀しみの円舞曲
月城は怜悧な美貌に温かな笑みを浮かべる。
「…はい。どうしても一言、暁様にお祝いを申し上げたくて…」
月城の優しさに胸が一杯になる。
「わざわざ、ありがとう…」
月城がカサブランカの花束を差し出す。
「こちらは梨央様よりの開店お祝いです。
…梨央様も暁様の手掛けられたお店の開店を大変お喜びです」
思いがけぬ梨央からのお祝いに、暁は驚く。
…梨央は昔から、暁になにくれとなく親切にしてくれる。
礼也との突然の婚約解消にひとたびは憤りを感じたが、今はそのことを申し訳なく思う。
…人は思いがけずに恋に堕ちるものなのだ。
梨央さんに愛する人が出来たことは、梨央さんのせいではないのだ。
大紋との哀しい失恋を経験した暁は、そう思える境地に至った。
「…とても立派で美しい花だ。…ありがとう。梨央さんにはくれぐれもお礼を申し上げてくれ」
素直に喜ぶ暁に、月城は穏やかに頷いた。

7人の小人ならぬ従業員の面々は、隅に固まり二人の姿をまじまじと見つめる。
「…は〜、こりゃまた凄い色男たいね…。
…坊ちゃまと、どういう関係たいね?」
「そんなん知らんわ!…しかし気になるのう…」
「…お前が妬いてどうすると?…しかしまあ、綺麗な二人たいねえ…」

…こそこそ囁く背後の厨房から派手な音と悲鳴が響いた。
暁ははっと振り向き、従業員達とともに厨房に駆け寄る。

厨房の床には、初老のコック長の伊東が尻餅をつきながら呻いていた。
暁が慌てて、伊東を抱き起こす。
「大丈夫ですか⁈伊東さん」
伊東は呻きながら答える。
「棚の寸胴鍋を取ろうとして、転んでしまいました…ど、どうやらぎっくり腰をやってしまったようです…」
7人の従業員は叫ぶ。
「な、なんじゃと⁉︎あと小一時間で開店時間やっちゅうに…どうするとね⁈」
副コック長を皆が振り返る。
副コック長の三浦は先月、独り立ちしたばかりの新米料理人だ。
「…む、む、無理です!お、お、俺一人では開店当日のお客さんの料理を全部作るなんて…む、無理ですよ〜‼︎」
三浦はべそをかく寸前だ。
「落ち着いて、三浦さん。…どうすればいいか、今考えるから…」
優しく声をかけるが、暁は途方に暮れてしまった。
…新人の三浦だけでは、店を回すことは不可能だろう…。
…その時、静かだが凛とした声が響いた。
「…私がお手伝いしましょう。暁様」
暁は驚きに目を見開いた。
「月城…⁉︎」
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