この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
暁の星と月
第7章 愛と哀しみの円舞曲
それからは怒涛の忙しさだった。
二階席も満杯になり、とてもギャルソンの数が足りずに、暁も制服に着替え、給仕の仕事を手伝った。
「ぼ、坊ちゃん!なんばしようとかいなね!」
他のギャルソンと同じ制服姿で、オーダーを取りに行く暁に従業員は驚く。
「坊ちゃんはこげんなことしたらいかん!」
「何言っているんですか。お客様をお待たせするよりましです。ほら、皆んなも手伝って」
暁は従業員を促すと手際良く、しかし優雅にオーダーを取りに行く。
いきなり美貌の青年がオーダーを取りに来たので、二人組の若い女性客が色めき立ちながら暁を見つめる。

カウンター越しにオーダーを通すと、綺麗にサラダを盛り付け終わった月城が暁の格好に目を細める。
黒い制服に白いギャルソンエプロンが初々しく爽やかな姿だ。
「…良くお似合いですよ、暁様。とてもお可愛らしいです」
暁は恥ずかしくて、軽く睨む。
「揶揄わないでくれ…」
「揶揄ってなどおりませんよ。私は本当のことしか申しません」
月城の眼鏡の奥の瞳は真剣そのもので…だから尚更、暁はこそばゆい気持ちになる。
「…君は誑しだな…」
暁は聞こえないように小さく呟いた。

厨房の月城の料理の腕前を見て、再び驚く。
玉葱と牛挽肉を手際よく炒めて、それをたっぷりの牛酪を使った卵のオムレツで器用に包む。
中はトロトロの半熟オムレツだ。
「…凄い…」
思わず口をついた。
三浦も口を揃えて誉めそやす。
「月城さんはめちゃくちゃ凄いですよ!ステーキの焼き具合も絶妙でした!…良かったあ…一時はどうなることかと思った…」
…月城は凄いな…
暁は改めて感心した。
…執事の仕事も完璧で、料理もプロ級で…
彫像のように美しく…乗馬の腕も際立って…

暁の脳裏に、先日の落馬風景が過ぎった。
…月城の逞しい胸に抱きしめられ、庇われたこと…
まるで恋人の抱擁のように強く、激しかった…

はっと我に帰る。
…何を馬鹿な…
恋人だなんて…
暁は首を振って自分の考えを振り払う。
…月城は…同性愛者じゃない…。
傷心の僕を見るに見かねて慰めてくれただけだ…。

…もう、夢は見ない…
恋もしない…
…だって…僕の恋は…

思いに沈む暁の耳に軽やかなベルが響く。
気を取り直して、笑顔でお客を出迎える。
「…いらっしゃいま…」
目の前の人物を見て、暁の笑顔が凍りつく。
「…春馬さ…ん…」




/479ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ