この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
暁の星と月
第7章 愛と哀しみの円舞曲
大紋はソフト帽を取りながら、ややぎこちない笑顔で笑った。
暁はその笑顔に釘付けになる。
…すらりと高い堂々とした体躯、仕立ての良い洒落たスーツ、きちんと撫でつけられた髪、理知的な瞳、美しい像の鼻筋、やや肉惑的な唇…
全てが以前のままの大紋だ。

硬い表情のまま立ち竦む暁に、大紋は気遣うように近づく。
「…来ようか迷ったんだけど、暁が初めて手掛けた店だから、どうしても初日にお祝いを言いたくてね…」
…優しい物言いも以前のままだ。
暁は漸く、強張る表情のまま少しだけ笑った。
「…わざわざ、ありがとうございます…」
大紋は手にした美しくリボンが掛けられた胡蝶蘭の鉢を手渡す。
「…おめでとう、暁…。大盛況だ。…よく頑張った…」
…聞きなれた優しい、低い声…
近づくと、大紋のいつものフレグランスが薫った。
暁の胸はずきりと痛む。
胡蝶蘭を受け取りながら、唇を噛み締める。

…この胸に、幾度抱かれたことだろう…
何度も激しく引き寄せられ、唇を奪われ、抱きすくめられた…。
…もうそれは過去の話なのだ…。

暁は必死で笑顔を作る。
「ありがとうございます。…こんなにご立派なお花を…」
受け取る時に、大紋の指と暁の指が触れ合う。
思わず、引っ込めようとした暁に、大紋は上から手を握りしめる。
はっと目を上げる。
大紋の熱い眼差しにぶつかり、暁は身体を強張らせる。
「…少し、痩せた?」
「…そうですか…?」
「…身体は…大丈夫?」
暁は小さく頷く。
「…ずっと…気がかりだった…」
密やかな低い声…
…耳元で幾度も囁かれた美しい声…
…愛している…暁…

…だめだ…
考えてはいけない…

暁は敢えて明るい声で、切り出す。
「今、お席を作ります。…是非、自慢のコース料理を召し上がっていかれてください」
暁は大紋を奥の席に促す。
厨房のカウンター前を通りながら、大紋が驚いたように中を見つめる。
月城が、料理の手を休めて、二人の様子を静かに見つめていた。
大紋と目が合うと丁寧に目礼し、再び料理の作業に入る。

「…北白川家の執事だな…どうしたんだ?」
暁は微笑む。
「…月城さんはお祝いに来てくださったのですが、丁度うちの料理長が腰を痛めて厨房に立てなくなったんです。それで急遽ピンチヒッターに…。本当に助かりました…」
料理を作る月城を慕わしげな眼差しで見る暁を、大紋はじっと見つめた。
/479ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ