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暁の星と月
第8章 月光小夜曲
「…お邪魔をして申し訳ございません。…司、降りなさい。忍さんはお友達とお出かけなのよ…」
「ヤダヤダヤダ!」
司は頑固に降りようとしない。
風間は、少し気遣わしげな口調で尋ねる。
「…義姉さん…どうしたの?こんなに早く…。ホテルに何か用なの?」
婦人は微笑みながら口を開く。
透き通るような白い肌、しっとりとした黒い瞳、繊細な彫像のような鼻筋、形の良い唇には僅かに紅が塗られていた。
「…お義父様に呼ばれたのです。…急なことで驚いたのですけれど…。
きっと、司の幼稚園のお話でしょう。
…先日、住民票のお話をされていましたから…。
やはり、お義父様がお勧めになる華族幼稚園にしたほうが司のためになるのかも知れません」
風間は形の良い眉を顰める。
「…そう…。それならいいけれど…」

そこに乳母らしき初老の老婆が小走りで現れる。
「…申し訳ありません。奥様、私が眼を離した隙に司坊っちゃまが…まあ!忍様!申し訳ありません!…ほら、坊っちゃま!お母様が御前様とお話の間、ミツとお庭で遊びましょう。…舶来のブランコがございますよ」
ブランコと聞いて、司の眼が輝き出す。
司はするりと風間の肩から降りると、
「ブランコ!ブランコ!」
と、早くもホテルの中庭へと駆け出した。
ミツが三人にお辞儀をすると慌てて、司を追いかける。
婦人は愛情深い眼差しで、司の去った方を見遣り、再び二人を振り返る。
「…お騒がせいたしまして申し訳ございません」
伏し目がちに静かに頭を下げる。
風間は暁に婦人を紹介する。
「…暁、兄嫁の百合子さんだ。
…義姉さん、こちらは俺の馬術部の後輩の縣暁くんだ」
婦人…百合子は嬉しそうに暁を見つめ、微笑んだ。
「…百合子でございます。…忍さんがいつもお世話になっております」
「…こちらこそ、忍さんにはいつも助けていただいてばかりで…」
「まあ…!忍さんは頼もしい先輩なのね」
百合子は自分のことのように喜ぶ。
…優しくて、可愛らしいお義姉さんだな…。
暁は好もしく思った。
風間は居心地悪そうに頭を掻いた。
…こんな不器用そうな忍さんは初めて見た…。
暁は可笑しくなる。

「…では、もうまいりますね。お義父様をお待たせしてはいけないので…」
丁寧に頭を下げる百合子に、風間は声をかける。
「…義姉さん!…何かあったらすぐに知らせて」
百合子は静かに微笑み、頷いた。




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