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第8章 月光小夜曲

暁は、美しい後ろ姿を見せながら嫋やかにロビーの奥に消えてゆく百合子を見ながら呟いた。
「…とてもお美しい方ですね…」
風間はやはり百合子を見送りながら、答えた。
「…君に似ているだろう？」
「…え？」
ふっと優しく微笑みながら、風間は暁を見つめた。
「…良く似ているよ。…いつもどことなく寂しそうで、儚げなところとか…。
星南で君を見た時には驚いた」
暁は慌てて首を振る。
「僕はあんなに綺麗ではありません」

風間は不意に悪戯めいた表情になり、
「謙虚も度が過ぎると傲慢だぞ。…こんな美人が何を言うんだ」
と、暁の額を指で弾いた。
「痛っ！…もう！忍さん！」
風間は可笑しそうに声を立てて笑うと、暁の肩を引き寄せ
「さあ、家まで送るよ。…あんまり遅くなると、君の兄さんに嫌味を言われる」
と、いつものように朗らかにウィンクしたのだった。