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暁の星と月
第8章 月光小夜曲
「…義姉さんにしつこく、実家に戻るようにと再三迫るようになった。義姉さんが断ると、今度は親父に金の無心をしだした。
恐縮した義姉さんは、司を連れて本家を出た。
…籍はそのままだけれど、事実上、風間の家を離れて親父に迷惑が及ばないようにと配慮したんだ。
…まるで日陰者のように…司と二人で…」
風間の表情には百合子への痛ましい思いが溢れ出していた。

「…それなのに、そんな義姉さんの思いを踏み躙るような真似をしやがって!」
「お父様までなぜ司くんを引き離すようなことを?」
暁の疑問に、風間は唇を歪めた。
「親父は拝金主義の俗物だからな。…大方実家の鬼ババアに丸め込まれたか、義姉さんの存在が面倒になったんだろう。いつまでも別宅に置いておくのも外聞が悪いと、実家に出戻らせようとしたのかもな。
…お袋は司を溺愛しているから、お袋にもせっつかれたんだろう」
重苦しい雰囲気が三人を包む。
「…奥様はずっと泣いておられます…。もう、死んでしまいたいと…!」
風間は拳を握り締める。
こんなに苦しげな風間を見たのは初めてだ。

暁は漸く合点がいった。
…忍さんは…百合子さんが…。
…そうだったのか…。

暫く押し黙っていた暁は、決意したように風間の肩を掴んだ。
「忍さん、百合子さんと司くんを助けに行きましょう!」
風間は驚いたように暁を見つめた。
「…暁…?」
風間の鳶色の瞳をじっと見つめて語りかける。
「…百合子さんが、好きなんでしょう…?」
風間の瞳が見開かれる。
「な、何を言っているんだ…」
「…隠していても、分かります。…だって、忍さんは嘘をつけない人だから…」
「…暁…」
途方にくれた子供のような表情をした風間を暁は包み込むように微笑んだ。
「…百合子さんと司くんを助けに行きましょう…。
お二人を助けられるのは忍さんしかいないんですよ…?」
「…暁…俺は…」
震える唇を噛みしめる。
…やがて、意を決したかのような表情になると頷き、懇願するような眼差しで暁を見た。
「一緒に…来てくれるか…?」
暁は力強く頷いた。
「僕も微力ながら力になります。…さあ、行きましょう」
三人は慌ただしく車に乗り込むと、疾風の如く縣邸を後にした。

その様子を玄関で静かに見守っていた執事の生田は、何事かを考えていた様子だったが、やがていつもと変わらぬ静謐な表情で屋敷の中へと入っていった。




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