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暁の星と月
第9章 ここではない何処かへ
暁と月城は倶楽部の離れにある会員制カフェにいた。
ここは会員制の倶楽部なので、基本的に馬を所有している会員しか利用しない。
だから月城のような従者の立場の者は本来は利用出来ないのだが、月城は北白川伯爵から特別にお墨付きを得ているので倶楽部のどの施設も利用が許されているのだ。

月城はアイボリーのシェットランドセーターに黒のツイードの上着に黒のスラックスという趣味の良い紳士のような洒落た服装をしている。
執事の執務の時の黒いテイルコートも好きだが、暁は月城の私服姿が好きだ。
…勿論執事とはいえ、使用人の月城がこのような高価な洋服を誂える訳はなく、全て北白川伯爵のお下がりなのだが、お洒落で伊達男な伯爵は、一度袖を通しただけで月城に下賜する洋服も数多いらしい。
だから、月城はいつも最新流行の洒落た格好をしているのだ。

頗るつきの美形の月城がそうした服装でカフェの椅子に座っていると、乗馬を終え、お茶を飲みに来た令嬢や夫人達が、彼をちらちら見ながら耳打ちしあうのだ。

その様子を暁は、誇らしいような、焦れるような気持ちで見守る。
…月城は美しい。
帝大を首席で卒業し、品格もあり、仕事も出来る。
北白川伯爵家の月城といえば、美男の執事の代名詞と言われるほど、社交界でも注目されている。
だが、浮いた噂は一つもない。
有閑マダムや恋多き女性たちが、月城に粉をかけているのは見聞きしたことがあるが、彼は全てそれらをそつなくかわしている。
ストイックで美しい…しかし謎多き執事…。
それが暁の月城への印象だ。

知りあって10年近い年月が経つのに、暁は月城のことを殆ど知らない。
…恋人はいるのか、好きな人はいるのか…
…そして…自分のことをどう思っているのか…。

暁は溜息をつく。
…本当に聞きたいことは、聞けないものなんだな…。

暁が浮かない顔をしているのを見て、月城は心配そうに尋ねる。
「どうされましたか?…お元気がないですね…」
「…いや、大丈夫さ」
慌てて首を振り、笑ってみせる。
月城はまるで弟を見るかのように慈愛に満ちた笑みを返した。
…いつもそうだ。
月城の眼差しは優しく、温かい。
だが、そこには熱い恋情めいたものは一切感じられないのだ。
…やはり、月城は自分を何とも思ってないのだろうか…。
暁は月城に会う度に切ない気持ちになるのだ。

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