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暁の星と月
第9章 ここではない何処かへ
暁は思わず、震える声で口走る。
「…春馬さん…」
大紋は暁を見ると、優しく労わるように頷いた。
「…遅くなってすまなかったね。…もう大丈夫だ」

そして、改めて引き締まった表情になると、落ち着いた口調でその場の男達に語り始めた。
「…私は縣社長より命を受けてこちらに参りました。
ご家族を亡くされた方々には心よりお悔やみ申し上げます。また、社長も今回の災害被害に大変に心を痛めておられます。できる限りの保証をさせていただく所存でございますので何卒お心を鎮めていただき、これから別室にて今後の住宅、就業保証、その他諸々のお話をさせていただきます。
他にも何かご心配なことがございましたらご遠慮なく、当法律事務所の弁護士たちにご相談ください」
大柄な大紋の背後には2名の弁護士が控えていた。
彼らは従業員たちに敬意を払うように丁寧に一礼した。
荒くれ者の炭鉱夫達はこの美男で都会的で知性漂う…また、真摯で信頼感に満ちた大紋の言葉とその雰囲気にすっかり圧倒され、黙り込んだ。

大紋は彼らに穏やかに説明を続ける。
「…尚、飯塚の旅館を一軒借り上げましたので、皆様にはしばらく旅館の方に移っていただきます。日赤の医師もただ今到着いたしましたので、医師の診断を受けていただき、問題のない方は車にて旅館の方にお移りいただきます。お子様やお年寄りの方々には、ゆっくりと温かい温泉に浸かり体力を回復し、少しでも休んでいただきたいと思います。…よろしいでしょうか?」
文句の付けようのない完璧な対応に、荒ぶっていた男たちも無言で頷いた。

大紋は穏やかに、彼らを別室へ誘う。
「…ご理解いただき、ありがとうございます。それでは別室で弁護士たちが仮設住宅他のご説明をいたします。どうぞ、そちらに…」
二人の弁護士が男たちを始め避難している従業員達を引率し、部屋を出た。

…部屋には大紋と暁、二人だけが残された。
大紋は暁をじっと見つめ、微笑んだ。
「…暁…よく頑張った。…すぐに来られなくてすまなかったね」
「…春馬さん…」
…懐かしいその貌…声…
張り詰めていた緊張の糸がぷつりと切れた途端、暁はその場に崩れ落ちた。
床に倒れる寸前に大紋が素早く暁を掬い上げ、その逞しい腕の中に抱きかかえる。
「暁…!しっかりしろ!…暁!」
大紋の懐かしい温もりと声を感じながら、暁は次第に意識を手放していった。

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