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暁の星と月
第3章 暁の天の河
帝国ホテルのダイニングでの食事は和やかで楽しいものであった。
三人が一緒に食事を取るのは久しぶりである。
今年父親の事務所から独立し、自分の法律事務所を立ち上げた大紋も、沢山の依頼人を抱え後輩弁護士と二人で日夜、仕事に忙殺されていた。
しかし、そんな中でも親友の礼也と…その弟の暁と過ごす時間は最優先にしてくれる。

大紋春馬も28歳になった。
相変わらず理知的で端正な容姿だが、最近自信が漲る逞しい面構えになってきた。
その隣に、やはり男性的な美貌と自信と貴族的な気品に満ちた礼也が並ぶとその場が華やかに輝く。
席に案内したウェイターが眩しげな顔をしたほどだ。
暁は大好きな二人が華やかに魅力に満ちているのを見るだけで誇らしく、胸がときめくのだ。

二人を慕わしげに見つめる暁も、星南学院の制服…星南学院は英国のパブリックスクール、イートン校と兄弟校なので、制服も黒のテイルコートジャケット、ファルスカラーにホワイトタイ、ベストに黒のピンストライプのスラックスという、イートン校の制服を模した英国調の洒落たものだった。
その制服が、繊細な人形のように整った美貌をした暁には実に良く似合っていた。
大紋はつい暁に見惚れてしまい、暁と目が合うと少し照れたように眼を逸らせた。
暁はそっと微笑み返し、さり気なくやはり眼を逸らせた。

礼也が仔羊の腿肉のローストを器用に切り分けながら、大紋に尋ねる。
「春馬も仕事仕事と、最近は色っぽい話を全く聞かないな。…そう言えば、四之宮子爵令嬢との見合い話はどうなった?
…夜会でお前に一目惚れしたあちらのお嬢さんたっての縁談だったらしいじゃないか」
大紋はばつが悪そうにワイシャツの襟元に手をやり、ワインを口に運ぶ。
「…丁重にお断りしたよ」
礼也が眉を顰める。
「どうして?」
「…事務所を立ち上げたばかりで、結婚どころじゃないからさ」
礼也が呆れたように溜息を吐く。
「それとこれとは話が違うだろう。…お前、見合い話を立て続けに断っているって妹さんの雪子さんが困っていたぞ」

そして、礼也は暁を見て説明する。
「暁、春馬はモテるのに相変わらず結婚話には無関心なんだ。こんなにいい男なのに色恋話がないって、寂しいと思わないか?」
暁は困ったように曖昧に笑う。
大紋が狼狽しながら礼也を諌める。
「よせよ。暁くんはまだ子供なんだから、そんな話をするな」
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