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暁の星と月
第12章 堕天使の涙
…そろそろ庭の桜の花も満開の頃を迎えようかという麗らかな春の午後のことであった。
月城は縣男爵家の執事から一本の電話を受けた。

「…旦那様が月城様に内密にご相談したいことがおありだそうです。大変恐縮ですが、本日屋敷にお運び願えないでしょうか」
縣家の執事は同じ職の月城にこの上なく丁寧にそう伝えた。

…礼也が光と半ば駆け落ちのように縣家で暮らすようになり、4カ月が過ぎた。
年明けの1月末には渋々ながらも麻宮侯爵の許しを得、二人は四谷のイグナチオ教会で挙式を挙げた。
光の母が二人の味方となり、侯爵を説得したのが功を奏したのだ。

純白のフランスレースのウェディングドレスに身を包んだ光は息を呑むほどに美しかった。
梨央と綾香が歓声を挙げながら、挙式を挙げたばかりの二人に祝福のライスシャワーを浴びせるのを、月城は微笑ましく眺めていた。

…と、華やかな招待客達の背後に、控えめに佇む正装した暁の姿を認めた。
暁は、礼也と光の姿をその美しい貌に微笑を浮かべながら見つめていたが、それは胸を突かれるほどに寂しげなものだった。

月城の視線を感じた暁が、彼を見上げる。
…月城の胸をざわめかせる漆黒の闇のような黒い瞳…
月城は思わず、暁に近づこうと脚を踏み出した。
しかし暁はそれを避けるかのように、招待客の人波の中へと消えていった。

月城は溜息を吐いた。
昨年のクリスマスイブ前夜からずっと、暁は月城を避けている。
馬場で会ってもさらりと挨拶をするだけで、その瞳は決して月城を捉えようとしない。そのすらりとした美しい姿は月城の傍らを淡々とすり抜けていく。

月城は、あの夜のことを後悔していた。
…彼が伝えたいことは他にあったのに、伝えられなかった。
自分の不器用な態度故ゆえに、暁を傷つけてしまった。
月城はそれを激しく悔やみ、何とか詫びたいと思ったが…彼にはもはや取りつく島もなかったのだ。

最近は、暁が馬場を訪れることも途絶えていた。
…暁様に何かあったのだろうか…。
気を揉んでいた矢先の礼也からの連絡であった。
月城は何か得体の知れない胸騒ぎを覚えつつ、縣家に向かうべく、支度を始めた。

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