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暁の星と月
第12章 堕天使の涙
暁はびくりと身体を震わす。
「…な…に…」
月城は暁を逃さないようにじわりと抱きしめる。
艶やかな髪を撫でながら、暁の耳元にそっと囁く。
「…先ほどの私の言葉をお忘れですか?…私が暁様のお身体を慰めて差し上げます…。…今日は、貧血を起こされた後ですから、特に優しくして差し上げますよ…」
暁は月城の常ならぬ様子にたじろぎながら、美しい瞳で睨みつける。
「…君は男を愛したことなどないだろう?…異性愛者の君に男が抱けるのか…⁈」
押し黙ると思った男は、その怜悧な瞳に笑みを浮かべた。
「…随分と私を見くびっておられるようですね。私が何年執事をやっているとお思いですか?」
暁は優美な眉を顰める。
月城の長く美しい指が暁の頬をなぞり、唇にたどり着く。
「…旦那様に付き添って出席した夜会はあまたの星の数ほどです。…そこでいくつもの火遊びに誘われました。
…ご婦人はもちろん、紳士や…青年貴族の方々にも…。
…誘われたらお応えするのが執事の義務です」
「…なっ…⁈」
月城は可笑しそうに笑い、暁の唇をなぞる。
「私こそ聖人君子ではありませんよ。…そもそも…私に手ほどきしてくれたのは、旦那様の美しい従者の方です」
驚きの余り、声も出ない暁の頬にキスを落とす。
「…暁様を満足させられる自信はあります…」
不遜に微笑う月城に、暁は挑戦的に睨めつける。
「…そこまで言うなら、試してみよう。
けれどもし、君が僕の欲望を満たさなかったら…僕はまたあのクラブに行く」
月城はゆっくりと眼鏡を外しながら、笑った。
「…御意のままに…」

眼鏡を外した月城は成熟した男の魅力に満ち溢れ、濃いフェロモンが香り立つような官能的な貌立ちをしていた。
暁の胸が甘く疼いた。
そんな暁から視線を逸らさずに、男はシャツを脱ぐ。
細身なのに鍛え上げられた美しい筋肉に覆われた身体が現れた。
「…あ…」
暁の黒い宝石のような瞳がしっとりと潤み出す。
男は彫像のように美しい上半身を曝け出し、暁の胸元に手を伸ばす。
「…今度は貴方の番だ…」
官能的な美しい声で囁かれ、暁はふいに羞恥心に襲われた。
乙女のように身を捩り、月城から背を向けた。
「暁様…?」
暁は首筋を染めて、俯く。
「…恥ずかしい…。君みたいに男らしい身体じゃないから…すごく貧弱だから…」
月城の中で、暁への愛しさといじらしさが込み上げる。








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