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暁の星と月
第12章 堕天使の涙
暁は、東の空が白み始めた頃に漸く目覚めた。
起き上がろうとしたが、暁の身体は男の逞しい腕に抱き込まれ、びくともしない。
ゆっくりと見上げると、月城が穏やかな表情で暁を見つめていた。
「…月城…」
「お目覚めになりましたか?」
気がつくと、身体は綺麗に清拭され、白い夜着を着せられていた。
月城も同じ、白い夜着だ。
…なんだか気恥ずかしくて、暁は仏頂面で頷く。
月城は少しも気にせず、暁を抱き寄せる。
「どこか痛いところはありませんか?…先ほど拝見しましたが、傷は見当たりませんでしたが…」
意識を失っている時に、恥ずかしい場所を観察されたのかと暁は羞恥から真っ赤になる。
「…暁様…?」
「…そ、そう言えば、なぜ月城はあんな店に来たんだ?」
話題を変えたくて、問い詰める。
月城は、ああ…とさらりと答える。
「偶然、暁様があの店に入っていかれるのをお見かけしたのです。…あの店のことは以前から社交界でも噂になっておりましたので心配になり、思わず跡を付けてしまいました」
…縣様のお話は内密にしよう。
暁様が気にされるとお気の毒だ…。

「…そうか…」
元来素直な暁は月城の説明を信じたらしい。
月城は改めて、腕の中の暁に諭す。
「もう二度とあの店に近づかないとお約束してください」
…その代わり…と、暁の髪を撫でる。
「…私が暁様が望まれる時に、お相手をさせていただきます」
暁は眉を顰める。
「それは…どういう意味だ?」
「…暁様が私を必要とされる時には、いつでも暁様をお慰めいたします。…ですから、あのような店の男達とは関わらないでいただきたいのです」
胸の中に言い知れぬ怒りが湧き上がる。
「…それはつまり…君は僕が男なしではいられない淫乱だと思っているのか⁈…君は僕を恋人に…」
…してくれる気はないんだな…と、言いかけて余りに自分が惨めになり、止めた。
「暁様!そうではありません。私は…!」
慌てて弁解しようとする月城を振り切り、暁は起き上がる。
「もういい!放っておいてくれ!」
自分の服を抱えると隣の部屋に入り、慌ただしく着替える。
「暁様!」
「入ってくるな!」
着替えを終えると、玄関へと走る。
月城がそれを追う。
「お待ちください!」
月城が暁の腕を捉える。
「お屋敷までお送りします」
暁は貌も見ずに振り払う。
「一人で帰れる!」





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