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暁の星と月
第12章 堕天使の涙
暁が珍しく早い時間に会社から帰宅すると、執事の生田が上着を預かりながら、静かに告げた。
「…旦那様と奥様は居間におられます」
「…ありがとう…」
…顔を出した方が良いとのアドバイスだろう。
生田は最近、在宅時間が極端に短い暁のことを気にしている節があった。
以前のように礼也と語らう場面が見られないのを、気を揉んでいるのだろう。
…もしかしたら、礼也からさりげなく言われたのかもしれない。
「ご挨拶してくるよ」
生田を安心させるように微笑みかけ、居間に向かう。

居間の扉を開ける。
ソファには礼也と光が仲睦まじく寄り添っていた。
光が甘えたように礼也にねだる。
「…ぜひ、行きたいわ。…ねえ、いいでしょう?」
礼也は苦笑しながら、光の髪を撫でる。
「しかし…夜だし…長時間の外出は光さんのお身体に負担がかかるだろう…」
「大丈夫よ、バレエ鑑賞なんて、じっとしているだけだもの。ねえ、お願い!」
礼也が扉の前で佇む暁に気づき笑いかける。
「お帰り、暁。今日も遅かったな…」
労わるような優しい笑み…。
兄さんは少しも変わらない…。
「ただいま戻りました。…まだ持ち帰りの仕事があるのでご挨拶だけで、失礼いたします」
…そう。
変わってしまったのは僕だ…。
…兄さんと光さんが仲睦まじく一緒にいるのを見るのが辛い…。
だからつい、すぐに部屋に引き込もってしまうのだ。

「まだいいじゃないか。こちらにおいで。…一緒にワインでも飲もう。ブルゴーニュ産のワインはお前も好きだったろう?」
光も人懐こい笑顔で振り返る。
「そうよ、暁さん。こちらにいらして。…ねえ、暁さんからもお兄様を説得してくださらない?」
暁は控えめな笑みを浮かべながら、二人の前のソファに座る。
「どうなさったのですか?」
「今度、上野にパリオペラ座バレエ団が来日公演をするの。観に行きたいのだけれど、お兄様が危ないからだめだって…」
軽く睨む振りをする光を礼也は子供のように嗜める。
「私がついてゆくなら良いが、生憎その日は仕事だし…」
「一人で大丈夫よ」
「綾香さんと梨央さんを誘ったらどうだ?」
「お二人とも今、伊豆の別荘にいらしているのよ」
「…じゃあ…」
「昔のボーイフレンド達なら直ぐに集まるわ」
「だめだ!絶対にだめだ!」
子供のような駄々を捏ねる兄を小さく笑い、暁が口を開く。
「…僕でよろしければご一緒しますよ…」

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