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暁の星と月
第12章 堕天使の涙
「…光さんさえよろしければ…ですけれど」
光はパッと顔を輝かせた。
「本当に?嬉しいわ!…暁さんみたいな美青年にエスコートされて、バレエ鑑賞を出来るなんて贅沢だわ!」
和かに微笑む暁を礼也は嬉しそうに見た。
「暁が行ってくれたら一番心強いよ。ありがとう」
暁は悪戯っぽい笑みを浮かべ、光に言う。
「でも僕はバレエに造詣がないので、途中で寝てしまってもお怒りにならないでくださいね」
「もちろんだわ。いてくださるだけで良いの」
「それを伺って、安心しました」
暁は、如才ない笑みを浮かべ、美しい仕草でワインを飲み干す。
「…では再来週の土曜日ですね。空けておきます。
…それでは僕はこれで失礼いたします。お休みなさい、兄さん、光さん」
完璧な立ち居振る舞いで挨拶をし、暁は部屋を辞した。

光は暁が去った方を見つめ、ふっと寂しげな笑みを漏らす。
「…本当に良い方よね、暁さんは…」
褒められて、礼也は相好を崩す。
「自慢の弟だ」
「…そうね…。お綺麗で、賢くて、気品があって、お優しくて…でも…」
…言いかけてやめる。
「ううん。なんでもないわ…」

礼也は光の逡巡を気にかけながらも、先日密かに報告に来てくれた月城の言葉を思い出していた。

「…暁様はあの店へは、お友達との悪ふざけの延長で行かれたようです。…確認しましたが、大学のお友達とお酒を召されていただけでした。もういらっしゃることもないでしょう…」
月城の報告に、礼也は胸を撫で下ろした。
暁が同性愛者ではなかったことに安堵したのではない。
暁がふらふらとそのような退廃的な店で憂さを晴らしているとしたら…兄として胸が潰れるほど心配だからだ。

…ともあれ、最近の暁は少し明るさを取り戻しつつある気がして、礼也は安心したのだった。







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