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暁の星と月
第12章 堕天使の涙
「…月城…」
「今日、私は暁様に会いにお屋敷に伺いました。貴方が私の家にいらっしゃらなくなって、私は今まで感じたことがないほどの寂しさと喪失感に襲われたからです。
…毎日が味気なく、風景は色褪せて見えました…。こんなことは、梨央様が婚約されてしまわれた時にも味わったことのない気持ちでした。
私は、暁様を愛しているのだと…そして貴方を失いたくないのだと改めて思い知らされたのです」

…夢を見ているのではないかと暁は何度も思う。
目の前の月城は本物なのだろうかと、暁は月城の冷たい手をぎゅっと握りしめる。
月城は暁の気持ちが伝わったかのように優しく手を握り返してくれた。
「…お屋敷に伺って、暁様が怪我をされたと知り、目の前が真っ暗になりました。…貴方を喪うかもしれないという絶望感を前に、私は決意したのです。
…貴方に私の愛をお伝えしなければと…。
今、お伝えしなければ私は生涯後悔すると…貴方を喪う以上の哀しみはこの世に存在しないのだと。
…だから私はここに来たのです」
月城の真摯な暁への愛の言葉は、受け止めきれないほどに熱く、濃く…暁はその目眩がしそうな幸福に新しい涙を流した。
涙で曇る月城の端正な貌を見つめて、泣き笑いする。
「…月城…僕は夢を見ているのではないのか…。
僕は何度も君に愛される夢を見た…。
けれどそれは儚い夢で…眼が覚めると君はどこにもいなかった。…だからもう夢は見ないと決めた…。
君を諦めて生きていかなくてはと思っていた…。
…だから…君が僕の前にいて、僕を愛してくれるなんて…」
暁は美しい貌にあどけない笑みを浮かべた。
「…夢ではない証拠が知りたい…。月城、僕を抓ってくれ…」
月城は相好を崩す。
愛しくて堪らないように、暁のすべらかな頬に手を伸ばす。
「…こんなにお美しいお貌を抓るなんて、私にはできません…」
…その代わり…と暁の唇を優しく奪い、濃密な甘いくちづけを与える。
「…あ…っ…ん…」
「ほら…夢ではありませんよ…」
月城が睫毛が触れ合う距離で囁き、悪戯っぽく微笑む。
暁の白磁のような肌が朱に染まる。
「…本当だ…」
二人は幸せな恋人同士のように額を合わせ、笑い合う。
笑いながら、暁の透明な涙は止めどなく流れる。
「…幸せすぎると涙は止まらないものなんだな…」
月城は暁への愛しさが溢れすぎて、言葉を失くす。
だから彼をひたすらに抱き締める。
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