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愛してるから罪と呼ばない
第2章 そのマカロンはまるで宝石
閨事の余韻にまとわれて、私達は寝具にもぐって向かい合った。
私がつばきさんの片手に自分のそれを擦り寄せると、長い指が物欲しげなそれを手繰り寄せた。
「夜更かししちゃったわね」
「明日お仕事なのに、ごめんなさい」
「星音ちゃんと一緒にいられたから、却って元気になったわ」
「そう言ってもらえると嬉しいです。明日、お店行って良いですか」
「もちろん。良かったら、また泊まりに来てくれてもね」
私はつばきさんの何なのか。
どれだけ身体を重ねても、精神を通わせても、決して可視的な永遠を共有出来る確証はない。
世間の人間は、けだし既婚者を特定の個人の所有物でも見る目で見ている。特定の個人を除いた第三者が入った瞬間、それは不義という過失と見なして非難する。彼らが実害を被ったわけでなくても、彼らに植えつけられた観念が、毛頭不義を指弾させる。
おそらく生涯、私は友人らの浮いた話題に入れない。
私は、つばきさんの好きだという告白を、どこまで信じることが出来るのか。いつまで。
胸奥のどこかでは不変を懐疑しているくせに、私は切実に終古に縋りたがっている。
私の声をいつでも思い起こして欲しい。こんな望みをいだいた私に、つばきさんは、思い起こすくらいなら会いたいと言って笑ってくれた。つばきさんの言葉に、思いに、喜べない理由はない。
愛を知らない少女で構わない。装飾主義で、無力な少女を気取り続ける。
私の本質はつばきさんのためだけにある。
煌めくマカロンを懐に持って、今日もがらんどうな譎詐に纏縛されたところで、私はうわべに準じた微笑みを振る舞う。
fin.