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愛してるから罪と呼ばない
第3章 真夏の花達
思い返せば、沙織との出逢いは最悪だった。
五年前、ゆうりは入社してまもない頃、唐突に沙織の呼び出しを受けた。彼女の意図も掴めないまま代表取締役の買い物に付き合わされて、個人的な新人歓迎にしては大袈裟すぎるホテルの最上階で夜景を眺めた。
戸惑うゆうりに、沙織は側にいて欲しいと言った。彼女が秘書として側に従える人間に用意していた待遇は、社会経験の浅いゆうりから見ても法外なのは明白だった。
次第に無遠慮になっていく沙織のスキンシップ。ゆうりはそれに耐えかねて、キスを迫った彼女を突き飛ばしていた。
これだけ魅力的な、誰からも愛されて然るべき女が、金銭で第三者の愛を得ようとしていた事実が、受け入れられなかったのだ。
沙織の左手の薬指に煌めくプラチナの理由を知ったのは、二度目のデートに誘われた時だ。
最悪の出逢いにも優る、彼女の最悪の運命を知った。彼女に何故、誰にも明かせなかった孤独を見透かされたのかも、あの時、分かった。
いつしか、ゆうりは沙織から離れられなくなっていた。