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第4章 料理人の比村　陽介

「あの…料理長…」

今日、常連さんから意見頂きまして…

「あ？」

ひぃぃ　怖すぎる顔に低めな枯れた声。

「しゅっ…もっと　旬の食材も使って欲しいと

言ってました！」

「あぁ？料理の味が分からない奴は泊まらなくて

いいんだよ。俺の腕は一流なんだよ。」

「でも…」

「話はそれだけか？出ていけ。調理の邪魔だ。」

美織は泣きそうな顔で配膳室を後にした。

「美織さん　大丈夫？」

声をかけてきたのは新入りの料理人の坂木君だ。

「比村さん、怖いですよね。

僕も仕事中　めちゃくちゃしごかれてますよ。

比村さん　

吉田さんから嫉妬されてるんですよ。」

吉田さんといえば

前・料理長の一番弟子で10年近く働いている。

比村さんが料理長になったのは

繊細な料理や素早さが光っていたから。

前料理長の後継者に選んだのは吉田さんではなく

比村さんだった。

吉田さんは納得いかず、散々　前料理長に

話に言ったけど周りの意見も一致していて。

仕方なく今も吉田さんはこの旅館で働いている。

「比村さんはどの料理人にも平等な態度です。

でも吉田さんは元弟子だった比村さんに

使われるのが気に食わないんでしょうね。」

「そうでしたか…」

男の上下関係も大変そうだな…

後から入ってきた新入り女将に言われたら

余計に腹立つかもね…

美織はふと思った。