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契約的束縛・誘惑なる秘密
第26章 香港ー盟主と皇帝
イェンフゥイに教えられた通りに、私は中央支部の近くにある高層ビルまでやって来た。確かに普通の商業施設と見えなくはないですが、私の感覚が中層以上の不穏な空気を捉えているんです。……黒い黒い気の流れ、間違いなく裏に通じるもの。それを確認した後に、私は普通を装ってビルの中へと入った。
(見た目は普通、そして存在する人々も普通。これでは一見では分かりませんね)
近辺に居た私ですら騙されたんです、イェンフゥイに聞かなければ全く分からなかったでしょう。
上手い隠れ蓑とは思いますよ? ですが一般市民をというのが気に入りません。
(最悪の盾ですか……香港の警察はどうでしょうね?)
人一人でも面倒だった日本、それから比べると香港は幾らかやりやすそうですが、流石に大量被害となると……。そうならないように留意はしますが、向こうは何を思っているのやら。
(中層までのエレベーターは……ありますね。問題はそれから)
外が丸見えのエレベーターに乗り、どう行動しようかと考える。多少の手荒は致し方なしとして、極力下層に影響しないのが望ましい。……何時からですかね、私がこんな事を考えるようになったのは? 前の私でしたら全く構わなかったというのに……。
(そう、仁科悠人をしてから……でしょうか)
人でありたい私。ですが守る為には、人のままでは居られない。盟主という化け物に戻らなければ、皆を守る事が出来ないと理解はしています。
何度見ても眩しすぎる香港の夜景を眺め、私は神経を研ぎ澄ます……盟主として。