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契約的束縛・誘惑なる秘密
第26章 香港ー盟主と皇帝
暫く……煙が納まるまで、その場で待ちましたが、晴れて改めて椅子を見れば、真後ろにマンホールのような縦穴があり、これを下ったと考えるのが妥当。
「あの怪我で、よく降りれたものです」
感覚的には肋骨を折った感じがありましたから、内臓と共に相当の激痛はあったはず。私と同じく痛みには強いのか、痩せ我慢か身の危険で無理矢理行動したか。どちらにせよ、此処まで動けた事が驚きでしょう。
「そう……ティェチンでしたね」
椅子の向こうの壁に倒れているティェチン。近寄って見れば、まだ多少ながらでも意識を保っているよう。
「私の声が聞こえますか?」
「……えぇ。とはいえ、老いぼれの命など……後僅か」
「それは……。遺言くらいは聞きますよ?」
ザッと手を翳して確認しましたが、内臓破裂と首の骨が折れており、助かる見込みは……無い。悔しいですが、私の力でも命運尽きた者は助けられません。出来るのは痛みを緩和してあげる程度まで。
「少しの間ですが……痛みが柔らかくなる筈。気休めですが……」
「気休めでも、最後に話せる事に感謝します。……ワシはワン・ティェチン、カイザー様の側近であり、息子共々カイザー様に仕えておりました」
「ティェチン、貴方はこの罠を初めから知っていましたね?」
「自らお出になるとは思いませんでしたが、策は聞いておりました。此方側と愚息側、双方に罠を仕掛けると……。愚息が心配と言えば愚かな事かも知れないが、レイを……多分貴殿方で言うワン・レンを……銀の調教師を罠に掛ける為……だが凶暴なユウウンが動いている……どちらの命も……危ない……」