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契約的束縛・誘惑なる秘密
第27章 香港―苦痛とメモリー
殺られたくない、その思いが俺の心に根付いていくよう。……そうだ、俺は弱肉強食に勝った、あの内戦で生き残った。だが残った先は、明日をも知れぬ破壊され尽くした街だけ。だからか俺は密林に入り、人を撃つ替わりに動物を撃ち食料にして生き延びたんだ。……だった一人で。
「……違う、あれは日本じゃねぇ、香港でもねぇ、同じアジアだが中東に近い独立国家。俺はそこで……正義の為という糞食らえな建て前で人を殺していた」
また違う国の語源。何故そうだったかまでは思い出せんが、確かにあの国に居たんだよ。それから俺はどうした?
(……誰かに拾われ、また違う国に渡ったのか?)
次に見えたのは、冬厳しい何処かの施設。此処もあの国同様穏やかではなく、己の保身の為に他者を追い落とす。罠、暗殺、取り入り、横流し。何でもまかり通る黒い世界。その中でも俺は必死に生き延びた。その成果で、そこそこ安定した地位を手に入れなかったか?
「……それなりに自由は利いたはずだ。他人に命令し、俺自身は安全な場所から動かん。それで成り立っていた」
更に違う語源。今度はどの国の言葉だ? 思い出す欠片は何れも暗いものばかり。これが俺の人生? 忘れても構わないような最低な人生だな、おぃ!
……だから忘れたのか俺は、見たくないものに蓋をするように、自ら記憶を消した?
(違う、そうじゃない。まだ頭の隅に引っ掛かりがある)
また違う国。今度は少し理解出来る、これは……日本。一見穏やかな国だが、裏はヤクザという独特の文化がはびこり、俺はそいつらを取り込む事を画策。ハッタリも此処までくりゃあ、上手くいくってもんだ。