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契約的束縛・誘惑なる秘密
第27章 香港―苦痛とメモリー
そうだ、ハッタリだ。
それなりに動いたかも知れんが、俺はハッタリで人生を歩んで来た。記憶を失っても尚、ハッタリで生きてんだから、どうしようもないな俺って奴は。
(思い出せは、思い出すほど、反吐が出る人生)
全てを思い出した訳じゃあない。だが思い出した片鱗は、何れも最低な事ばかり。いいことなど何もない人生ってのか? こう、一つくらいは何かがあると思ったが、そうでもないらしい。
(くっ、また……。女? 知らん……いや、朧気だが俺の女だったという認識がある)
廃墟みたいな家の中で、俺は茶髪でロングヘアーの女を、滅茶苦茶に犯している。鳴き叫び俺にすがるが、俺はお構いなしに女を犯し続け……そこに愛情の欠片も見られない。ただ貪り合うかのように、犯している俺が居るんだ。
次に見えたのは、その女が違う男と居る光景。気楽に肩に手を掛け、男は女にキスをする。偶々見掛けたらしい俺だが、その時の感情が俺の中に入ってくる、『怒り、裏切り、そして嫉妬』。その感情のままに俺は男を誘き出し、銃の引き金の弾く。
(俺にもこんな感情があったのか……)
フラッシュ画像のように、次々と頭の中に映る俺の記憶。その時の感情まで再現され、今の俺が思うのは最低な野郎だったということだ。
女を取られたから相手を殺す。
のし上がる為に罠を掛け、殺っていった仲間。
これじゃあ俺一人なのも頷ける。他人を信じない、それが昔の俺のようだな。
(でもな、それに違和感もあんだよ)
最後のピースが合わないパズルのように、埋らない違和感の記憶。そこだけが思い出せねぇ。