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契約的束縛・誘惑なる秘密
第27章 香港―苦痛とメモリー
◇
「ちっ、面白くねぇなぁ」
「……っっ!」
俺の中で思い出しかけた記憶の葛藤に、すっかり忘れそうになっていたが、ユウウンは犯され続けるサザンクロスを見飽きた様子なんだよ。
手にしていたナイフを床に落とし、歩いて来るのは俺達のほう。
「俺は堕ちる女が好みで、耐える女は好みじゃねぇ。あの女、責められる事に慣れ堕ちやしねぇな。つまらん遊びより、こっちの方が面白味がありそうだぜ」
腰の後ろに手を伸ばせば、独特の『カチャ』という鉄の音が鳴る。そう、ユウウンが取り出したのは……拳銃、それも俺とレンに銃口を向けているときた。
「サザンクロスが口を聞いたらじゃなかったか?」
「あぁ、あの女が生意気な口を聞いたら、傷を一つ付けると言ったなぁ。だが殺らないとは言ってねぇ。どの道生きて帰れるなんざ思ってねぇだろ。なぁ、レイ?」
「勝手にしろと言ってる。ウードゥには悪いが、俺の変わりなど幾らでも居るんだ。俺が死んだところで、何一つ変わることはないんだよ」
「それでいいのかよレン」
「どうせ生きていても、使われ捨てられる運命。今日命が消えても、1年後に命が消えても、殆ど変わりはないんだ」
諦め……いや覚悟なのか?
レンは初めからこうなる事を知っていた。だから危機に陥っても、動じることすらしない。
俺は? 俺はどうなんだ?
思い出しかけた記憶の欠片を完全なものに出来る前に、こんな野郎の手に掛かり死ぬのか?
(……冗談じゃない)