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契約的束縛・誘惑なる秘密
第28章 香港―苦痛とレリース
無駄、私の方が早いもの。
引き金を引き切る前に、私の風の刃が拳銃を襲う!
『シュンッ』という音を立て、拳銃を持っている腕を捉え、その後に『パァーン』という発砲音。……拳銃は斬れた腕と一緒に床に落ち、銃口もウードゥさんから逸れた。
でも、私の怒りは収まらない。
「許さない。貴方も、貴方の周りにいる者も全員。私の怒り、貴方方の命をもって償いなさい!」
途端にこの劇場中が私が操る風に包まれる。
『盟主に逆らう者に死の制裁を』
風は鋭い無数の刃と化し、そこに存在する人間に襲い掛かる。だって貴方達が悪いの、私に拳銃なんかを見せるから。
「一人……また一人……」
私の力で切り刻まれ倒れていく人間。それを虚ろに見ている私。
もう躊躇いなんて……無い。日本で婦人警官に風の刃を使った時から、日本支部で男性をナイフで斬り付け血を奪った時から、私の手は血に濡れているもの。
「…………」
黙って両手を見ればほら、私の手は血に溢れかえっているのが見える。真っ赤な鮮血に両手が染まっているよ。それでも尚、両手から血が溢れて来るみたい。
もう戻れない、私は沢山の人を殺してしまった。この手を赤く染めるほど、沢山殺したの。……私自身が生きる為に……。
(分かってる、仕方がないって。人の血が無ければ、私は闇雲に人を襲ってしまう。選択肢なんてもう無いの、受け入れなければ私は大切な人達を襲ってしまう。それだけは嫌)
逃避行の時、宮野さんを襲おうとしてしまった私。あれ以降私は躊躇わないと決めた。