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契約的束縛・誘惑なる秘密
第28章 香港―苦痛とレリース
だからこれを見ても、もう何も思わない。私には必要な事だって、十分に理解しているから。
風は舞う。風が入れない場所なんて無い。逃げても追い掛ける風の刃、私の想いの力。
唯一ウードゥさんとレンさんの周りだけを避け、劇場内は私の風の支配下に下る。
「そう……。私の敵を全て消して。人も物も、この空間に存在する全てが、私には不要なの」
私の声に応えるように、風は劇場内をクルクルと回る。一人も見逃さないように、二度と私に拳銃を見せないように……。
でもそれは、信じられない言葉によって、止められてしまう。
……その言葉は……。
「……止めろっ! もう止めるんだっ、美波っっ!!」
「…………え?」
ドキッとして、私の力は宙に消えてしまった。
でも今の言葉……私を美波って呼んだ。それも日本語で……。
恐る恐るウードゥさんを見れば、外れない鎖に暴れている姿が見える。
(……鎖……僅に隙間が……ある)
手を前に出し、もう一度だけ風の刃を放つ。
『パリンッ』という金属の音がして、ウードゥさんとレンを縛る鎖は砕いたよ。そうしたら、ウードゥさんが立ち上がり私に近寄って来るの。
「もういい。十分にやっつけただろう……美波」
「どうして日本語……それに名前……」
「日本人なんだ、日本語が話せて当然だろう? それに俺は美波の事を知っているんだ。……八神美波、最近はフルネームで呼ばれる事は無いのか?」
「っ! 何故ウードゥさんが私の名前を知っているの?」