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契約的束縛・誘惑なる秘密
第28章 香港―苦痛とレリース
ウードゥさんが日本人!?
でも、でも、ウードゥさんは記憶が無いって……。
どうなっているのか、分からない私と、ウードゥさんは握り締めていた自分の拳を開いて見せた。
「……あっ!」
「彼奴に飛ばされ、偶々俺の手が届く場所に落ちた。
これを握り締めてからか、俺の記憶が少しずつ出て来たのは……」
「記憶、戻ったの?」
「完全ではないが……」
ウードゥさんが、ブレスレットに付けてあるピアスの一つを摘まむ。そのピアスは……。
「……あんな土壇場で渡したのに、持っていてくれたんだな……美波」
「……う……そ……」
このピアスの持ち主と、どんな場所で渡してくれたかを知っているのは……一人だけ。
「散々美波を泣かせ、俺自身も死んだと思っていた。なのにこうして生きている事自体が不思議なんだ。……どうせ彼奴が一枚噛んでいるだろうがな」
「まさか、まさか……」
「記憶を無くし、イン・ウードゥとして美波を振り回したのは悪いと思ってる。だが……逢う運命だったんだろう、そう思わないか美波?」
「さくらざわ……さん?」
「あぁ……。完全ではないが、俺が櫻澤霧斗でお前が八神美波だということは分かる」
嘘……嘘!?
櫻澤さんが生きていたなんて!!
仁科さんの記憶にも、アリアンからの知識でも、櫻澤さんは死んだ……そうなっていたのに。だけどあの時、櫻澤さんを助けられたのは仁科さんしか居ない。
どうして? そう考えるけれど、櫻澤さんしか知らない事を知っているのだから、やっぱり櫻澤さん……なんだよね?