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契約的束縛・誘惑なる秘密
第28章 香港―苦痛とレリース
「……美波……」
「……っ!」
櫻澤さんの手が私の頬に伸びて来たけど、私は一歩後退りしてしまう。
「どうした?」
「……汚いから。
それに私はもう、櫻澤さんが知っていた私とは違う。人を傷付けても何も思わない私、櫻澤さんが知らない私」
「汚いとは思っていない。前と同じく俺達を助ける為だったのに、汚いもくそもあるか。そして確かに俺は、変わってしまった美波を完全には把握していない。だけどな、これから知っていけば良いことじゃないのか?」
「……本当に櫻澤さんなの?」
「あぁ。……すまなかった美波」
「……っ!」
躊躇いなく私の腕を取り、私を抱き締める櫻澤さん。
見上げてみれば、ウードゥさんの時より少しキツめな瞳、そしてなによりも仄かに甘い香りが漂うの。
不思議、ウードゥさんの時は感じなかったのに、櫻澤さんに戻った途端にあの匂いに包まれるなんて……。
「とりあえず、これを羽織ってろ」
「……あ……」
そう、私って服を切り裂かれ裸体のまま。それに俺達の残滓だってそのままなのに! 構う事なく私を抱き締めてくれる……そう、上杉組の時と同じように。
「レン、動けるか?」
「なんとか……。肩の傷は、今ナイフを抜くと余計に出血するよ」
(??
レンさんと、あの人の血)
私には普通と違うと感じてしまう。なんと言えばいいんだろう? どちらかと言えば、私や仁科さんに近い、そんな感覚を受けるの。これが仁科さんが必死になっていた理由?