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契約的束縛・誘惑なる秘密
第28章 香港―苦痛とレリース
『私のせい』と言う仁科さん。過去の過ちは誰にだってあるのに、一人で抱え込む理由は仁科さんの血だから。分かるよ、微かにだけど仁科さんと同じ血の感覚が、私だから分かる事だってあるの。
「……美波?」
「レンさん、傷を見せて?」
「サザンクロス?」
「ただ、傷を見せて欲しいの」
櫻澤さんの腕の中から離れて、レンさんの側に座った私。近付けば余計に分かる、この感じだったら普通以上に私の力が働くこと。
そう、適合率が普通以上なのよ。
「……っ!? おいっ、今ナイフを抜いたら!」
「……大丈夫……」
此処まで見せたのだから……いいよね?
私はレンさんのナイフを引き抜き、傷口に手を当て力を使う。少しずつレンさんに合わせて……レンさんの傷口が塞がるように、痛みが少なくなるように、私の力を馴染ませていく。
「…………」
「傷と痛みが……」
「相変わらず便利だな」
「ウードゥ、言っている言葉が分からない」
「あ? あぁそうか。俺もまだゴチャゴチャなんだ、意図してやっている訳ではない」
「??
ウードゥ?」
「なんだ」
「話し方が……。まるで別人を見ているみたいだ」
「別人か。確かに別人だろう、記憶が戻れば元の方に寄るのは仕方ないな」
「記憶が戻った……」
「かなりの抜けはあるが、俺が誰だったかくらい、理解出来る程度には戻った。レンには悪いがCross sels側だな俺は」
「ウードゥが向こう側」
「悪いな、こればかりは消せない事実だ」