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契約的束縛・誘惑なる秘密
第28章 香港―苦痛とレリース
「レンが動けるなら、さっさと立ち去った方がいい。これを説明すれって方が難しいからな」
「え? キャッ!」
私を軽々と持ち上げる櫻澤さん。簡単に横抱きにされてしまったけど、違うの!
「ちょっと待って!」
「どうした美波?」
「このままじゃ離れられない。ちゃんと後始末はしないと、後々困るもの」
「後始末ってもなぁサザンクロス、これをどうするんだよ?」
「全てを無かった事に……。それくらいは出来るよレンさん。何か火を付けれる物があれば楽なんだけど……」
「火? オイルライターでも良いのか?」
「それで大丈夫」
櫻澤さんがホケットからオイルライターを出して、私の手に渡してくれる。私は蓋を開け火を点けて、オイルライターを床に落とした。
「火で燃やすのか? だがな、こんなオイルライターじゃ、劇場内に火が完全に回るには時間が掛かるぞ」
「それも大丈夫、火があれば後は楽だから。……火を一つから2つへ……2つから4つへ……ドンドン増えていって、この場所を炎に包んで……」
私の言葉通りに、一つの火は沢山の火になり、交わって炎と化す。劇場内を包む炎は、この惨劇を消してくれる。だから心配ないよ。
「いきなりだな。俺達も火と煙に巻き込まれないうちに行くぞレン!」
「あ、ああ……」
レンさんは茫然としていたけど、櫻澤さんに引っ張られて走る気にはなったみたい。裏口があるとレンさんが言うので、私達は裏口から劇場の表へと出た。