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契約的束縛・誘惑なる秘密
第28章 香港―苦痛とレリース


外に出ても、そこは細く暗い裏路地。何時炎が屋外に吹き出すか分からない今、櫻澤さんとレンさんは表通りに向かい必死に走る。

「私自分で走れます」
「その格好で、更に素足で走るのか? 俺的には御免被りたいと思うが?」
「……うっ」

それを言われると従うしかない私。だって本当に裸体にジャケット1枚の私の姿だもの。靴を見付ける余裕すらなかったと、今更ながら実感するよ。
緊迫感に包まれる中、2人が走っていれば、逆に表通りの方から人が走って来たの!
立ち止まり、前を睨む櫻澤さんとレンさん。特にレンさんは私達の前に立ち、殺気まで醸し出している。でもね、走って来たその人は……。

「待ってレンさん! その人は私達の敵じゃないわ」
「……ということはCross sels……」
「それはそうだけど……」

レンにとればCross selsは敵。分かっているよ、でも今来る人は大丈夫だと思う。

「サザンクロス様っ!!」
「ルーク、お願いだから2人を威嚇しないで!」
「っ! ですがこの2人は……」

走って来たのは……ルーク。多分に私の怒りの波動が、仁科さんに伝わってしまったのには気付いていた。だからルークが来ても驚きは少ないの。

「ルーク? ルーク・ガルシア……か?」
「イン・ウードゥ貴様……」
「かろうじてだが、記憶の隅にはあるな」
「記憶が戻ったのか? イン……いや、櫻澤」

櫻澤さんが溢した言葉に、ルークが過敏に反応する。そしてルークは、ウードゥさんが櫻澤さんだと知っていたんだ。

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