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契約的束縛・誘惑なる秘密
第28章 香港―苦痛とレリース
「まだ曖昧な部分はあるが、俺が誰だったくらいは分かるぞ?」
「そうか。取り戻して良かったと言うべき」
「ルーク、どうしてルークだけが知っていたの? 仁科さんもアリアンも知らなかったのに……」
私の疑問。私が最後に見た櫻澤さんでは、誰も助ける事が出来なかった筈。それくらい櫻澤さんの命の炎は消えかけていた。
もし、あの時点で助けられるとしたら仁科さん。でも、仁科さんには櫻澤さんを助けた記憶なんて無い。それなのに、どうして櫻澤さんは生きているの?
「それは……。自分がコンラート様と合流した後に説明があると思います。自分はただ誓約を守ったのみ。ですが耐えられず、過ぎた事を言ってしまったのは謝ります」
「……それは『杞憂に終わる』と言ったルークの言葉?」
「はい、その通りですサザンクロス様。自分の余計な一言……もしもと考え言ってしまった言葉で、全員を混乱させてしまいました」
「……それはルークが心配してくれたからでしょう? 私は何も思っていません、そして事実を知ったら皆納得すると思います」
「お心痛み入ります。
それにしても近辺はキナ臭い臭いが漂っていますが、何かありましたか……と、聞く方が野暮ですね。急ぎこの場から離れましょう」
そうだった。呑気に話していたら火が回って此処まで来てしまう。ルークは車だと思うから、今はルークに従うのが一番だよ。
「……俺は……」
「レンさんも一緒に……。ツインドラゴンだとしても、私が手を出させません。それだけは信じて」
「……分かった」
ルークの先導で表通りまで出て、停めてあった車に乗り込み、私達は劇場を後にした。