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契約的束縛・誘惑なる秘密
第29章 歓喜の一夜

「この先どうなるんだろう? 日本で調教師をする準備をしていても、狙われるせいでそれも儘ならない。私達はただ、もう一度日本で調教師をしたい、それだけなのに……」
「現状を打破しなければ、全てが回る事は無い。……辛いなそれは」
ずっと抱き締めてくれている霧斗の腕に、更に力が籠る。本当は分かってるの、霧斗が戻ったからといっても、今の現実は簡単には変わらないと、仁科さんと私の事にみんなを巻き込んでいるんだって。
何故このタイミングなの? それは何度も思ったよ。やっと霧斗も一緒に居れるというのに、運命は中々私達を自由にしてくれない。
「霧斗、私は……」
「概略だけは分かったから、もう何も言うな美波。考えるのは俺だろ? というより、その為の俺だ」
「…………」
「だから今は……こうして俺に抱かれてろ。少しでも美波の負担が減ればそれでいい」
「……でも……」
「こうして抱き締めているだけでも安心する。よく一緒に寝たな……ただ抱き締めて眠るだけだったが、何よりも安心出来たんだ」
「……覚えてる」
眠りが浅い霧斗の安眠の役割、私と一緒に眠る時は深く熟睡していた。少し前の事なのに、何年も経ってしまったような感覚がする。
「俺が考える、だから美波は無理して考えるな。外に目を向けるより、内に目を向けてやれ。その方が美波らしい」
「…………」
誰も言ってくれなかった言葉を、霧斗は次々と私にくれる。それとも私が頑張り過ぎていたの? 霧斗が居ない分、前に進もうとはしたよ。そう、霧斗が言ったように……。

